「……ごめんね。わたしのせいで制服汚させちゃったね」
「そこ間違い。僕の非力さを罵るところだ」
頭上の百瀬が見上げると悲痛な顔をしていた。
「わたしが勝手にやらかしちゃったことにまで落ち込まないでよ。片方だけの頑張りじゃあ、何にでも限界はあるでしょ? 迷惑ばっかごめんね。でも、置いていかないでくれたら嬉しいです」
頬っぺたでも引っ張って、無理にでも笑わせてやろうかとも思ったけど、埋まっていては届かない。ちょっと伸ばしてみた手は、やっぱり空を切る。
やがて、笑みが舞い戻ってくれたことでわたしは安心し。
穴の中。丸く切り取られたみたいな世界の景色は、夕暮れから夜の色へ染まっていく気配が漂ってきた。
見上げる百瀬の顔も同じように染まる。色のせいで寂しそうに感じる顔を見たら、ちょっとばかり庇護欲が出てくる。顔を傾ける度に流れる百瀬の髪がなんだか、可愛かったんだ。
「っ」
そこでようやく頭に浮かぶなんて、冷静だったのは勘違いだったみたいで。名案名案なんて考えていたから、当たり前のことを見落としていた。
「そうだっ、ケータイッ!!」
「っ、ああっ!!」
わたしのお馬鹿な閃きに、百瀬も同じように声が跳ねた。