……つまりは、そういうこと。学校側は、『コト』を荒立てて世間に広めたくないんだ。
八十過ぎのおじいさんが、自身が昔、校長を務めていた高校の女生徒を追い掛け回す、などという事態を。
別に、すぐ逃げられるし、相手が相手だし、本気で貞操の危機なんてことは大丈夫だけど。
でも、それでもだ。
「帰りもいたら、どうしよう……」
今の時期はプールが開放されているから部活は休みたくない。よって、下校時刻は遅くなる。日は長いし、学校付近での遭遇だけだと思うし、小夜と大輔も一緒だから大丈夫だとも思うけど。
ああでも、途中で別れちゃうんだよな。
……ちょっと心細く、不安はある……。
わたしだって、それなりに怖がることもある女の子なんだ。
あれこれと対処を考えている間に放課後になって、部活が始まってしまい、あっという間に下校時刻となってしまった。
もうどうしようもないんだし。そう思いながらも、大輔の影に隠れながら校門へ向かうと、そこには百瀬がいた。
対処だと考えた時に頭をよぎった方法のひとつのターゲット。わたしたちと違って帰宅部だし、家はとても近所だから途中別れることはないし。
「朝のみーちゃん見たら、待つしかないだろう」
そう言って、わたしの利用しようとしか考えていなかった黒い心が浄化されそうな透明な笑顔で、百瀬はいてくれた。