「っ!?」
校門のところで、わたしの足は止まってしまった。
「――みーちゃん、大丈夫だよ」
「うん……」
バス停には、青と白の花束を抱きしめ、おじいちゃんが座っていた。鮮やかでキレイな花の色は、夏の頃からずっと変わらない。
最近では遭遇することもなくなって、それ以外の時でも、わたし以外の人もおじいちゃんの姿をこの辺りで見かけることはなかったみたいだったのに。
わたしは勝手に、誰にも何も訊くことはせず、おじいちゃんはもう、引越しを済ませたんだと思っていた。
大丈夫だと、もう一度優しく囁いてくれたのは、隣に立つ百瀬の声。
百瀬はちゃんと知っていて、もう大丈夫だと言うわたしをずっと待っていてくれた? わたしの分まで知ろうとしてくれたんだ。きっと。
やだ……情けなくて泣きそうになってしまう。
「みーちゃん、走るよっ!」
「えっ? あっ!」
百瀬がわたしの手をとり走り出した。
一歩遅れてわたしも走る。
「さようならっ」
こちらに気づき、ベンチから腰を上げかけたその時点で、わたしたちはおじいちゃんに別れを告げ、あっという間にその場を離れた。
通り過ぎた時、百瀬とわたしじゃない声が僅かに聞こえた気がした。
「さようなら」――と。