それは、
「……なんて卑怯」
なんて卑怯なんだろう、わたしは。
「でも、そうしてほしい。その誰かに申し訳なさを感じるんだったら、相手を僕にすればいい。分岐点でもがいてるのは知ってるんだ。みーちゃんが動いてくれるのは、嬉しいことだからさ」
こんなに多くの言葉。それはきっと、わたしを動かそうとしてくれている。
「僕にすればいいって言ったけど訂正しておくよ――多分僕は、その誰かが僕以外だと、寂しいって思うよ」
「なんで?」
「みーちゃんがピンチの時、僕以外の奴が活躍するのは、許せないんだ」
「百瀬って、昔から変な固執あるよね。大輔の交友関係の広さに置いてけぼり感くらって涙浮かべてみたり、小夜とわたしが不審者に遭遇したら、犯人突き止きとめようとか犯罪級の撃退考えてたり。あのときは、犯人見つかってほしいけど、見つからないようにとも思ったよ」
それだけ、今も拗ねたみたいに頬を少し膨らませる百瀬は、わたしたちを大事に思ってくれているということだけど。
「僕は今も同じ?」
「全部じゃないけどね。でも、そういうとこあるって安心する」
昔の姿が残っていることに安心する。まだ、わたしもみんなに追いつけるっていう感覚は、動き出すきかっけになってくれるから。だって、姿が見えない遠いところまで行かれてしまうと、寂しいじゃない。