きっと――
みんな慣れて、それは日常になったんだ。
終業式の頃には誰も、この状況について何も言わなくなった。
それは、わたしにも当てはまること。せっかくの夏を泳げなくなるかもしれない。そんなストレスを抱え込まなくてよくなったのもきっとある。馬鹿みたいに警戒したり怯えることはしなくなった。
ひとえにみんなのおかげなんだけど。
状況に勝手に慣れて、他力本願でストレス回避したということ、理解はしている。
「……百瀬。やることあったら優先してね。ヤだからね。無理とか」
夏休み。宣言通り、百瀬はわたしの部活に付き合ってくれ、図書室登校だ。今のところ皆勤賞なそれは、大事な用を潰してしまっていないか気になって仕方がない。
「ああ、大丈夫。ここでもやることはあるから。言っただろう」
けど、訝しむわたしに邪気なく百瀬の表情は朗らかだ。
「……」
「みーちゃんは、いつもそうやって後ずさりするよね。勢いを保とうよ」
「スタートダッシュだけは、いいんだよね」
ふと立ち止まると、自分なんかが、そんなことわたしが……と思う。そして、様子見のまま、停滞ばかりだ。
言葉では知ってる。動かなければ始まらない、って。
「みーちゃんは、動き出さないし、あんまり頼ることもしない。ずっとそこにいて抱え込む。自己完結が大好きで、そして、いつの間にか自分でも自覚できない場所に仕舞い込む。だから、何がどう怖いのかわからなくなるんだ。だったら、今回みたいに少しくらいは誰かを利用してほしい。その誰かに便乗して、動かされるべきなんだ」