「うん。理由は――」
秘密ではないらしく、あっさりと打ち明けられそうな雰囲気が漂ったけれど、チャイムが邪魔をした。図書室から教室は少し距離があるから、もう出ないといけない。
わたしに続いて百瀬も慌ててカバンを持つ。ジャージを鞄から取り出しながら歩く百瀬は、どうやら最初の授業は体育らしい。
「みーちゃんが負担だって感じるだろうし、僕だって用がある時は断らせてもらうから。それでいいよね?」
「そっ、そんなの当然じゃないっ。ちゃんと優先してよね大事な用はっ」
返答は了承と理解されてしまったらしく、誘導さるた気もするけど契約は完了してしまった。
わたしはそれを甘んじて受け入れさせてもらうシフトにチェンジする。こちらとしてはマイナス要素のない契約に、これ以上首を横に振ることは出来なかった。
――夏休みが始まるまでの間、百瀬が言った通りの意見がわたしに囁かれた。
なるべく、気にしないように努めた。
小夜と大輔も、百瀬と同じようなことを言って慰めてくれた。
みんな、大人だった。
わたしよりも、多分ずっと、知らないのにわかってる。