『もう大丈夫』『もうあんなことないだろう。あったとしても、多分平気』――前向きに思っていたけど、いざ、おじいちゃんを前にすると足が竦んだ。
青と白のコントラスト。今日も素晴らしい天気の夏の青空にも負けない鮮やかな花束を持って、おじちゃんはバス停のベンチに座っていた。屋根があるところにいてくれるのはいいんだけど。
どうしよう……。
暑さとは違う汗が背中を流れた。ストレートの髪がちりちりに焼け焦げていくような感覚に陥る。
わたしじゃないかもしれない。普通に、前みたいに朝の挨拶をすれば、返してくれるかもしれない。
立ち止まったままだったわたしの足は、この後、無理に動かされ駆け出すことになる――百瀬だった。
百瀬が助けてくれた。いきなり手をとられてふたりで全力疾走する。
「おはようございますっ」
途中、きちんと挨拶をして、おじいちゃんの前を走り抜けた。