自分の知らないところで、こうして好意をもってもらえるのは、とても嬉しくて。こんなわたしなんかがとも思ってしまうけど、やっぱり嬉しくて。


「肩を震わせて笑う様子とか、授業中に黒板の前に立つ自信のない背中、すぐムキになるとこ、硬いおにぎりを頬張る口、声とか髪とか指先とか、もう全てかもしれない――全部、好きだったよ」


けど、同時にこんなに苦しい。


目尻には、もう知られてしまうくらいの涙は溜まっていた。間宮くんはそれを見逃してくれた。分かっているんだろう。指摘しまえば、きっと流れてしまうことを。


「じいさまのせいで辛い目に遭っているとき、何も出来なくて申し訳なかった」


「そんなことっ」


「本当は、百瀬の場所が自分だったらと願ってたよ。……願う、だけだったけれど」


「ごっ……本当に、ごめんなさい」


そうして、指摘しない代わりに、間宮くんはポケットから綺麗にアイロン掛けされたハンカチを出して、


「っ、わたし自分でするか……」


「いいから。怪我人はゆっくりしてるといい。首は、悪化していないか?」


「うっ、うん」


わたしの目を閉じさせ、涙を拭いてくれた。


「そういう無防備で疑わなくて、すぐ信用していまうところも大好きだったよ」


けど、無防備だというわたしの涙を、間宮くんは優しく拭いてくれただけだった。