言葉に詰まっていると、ごめんと謝られた。


「ちょっと意地悪だったな」


そんなことはないと言いたかったけど、一瞬で零れそうになった涙のせいで、それを虚しく飲み込んだ。


人前で涙してしまうことは別に悪いことではないと思う。けど、今そうしてしまうのはきっと……。


何度も何度も、気持ちを飲み込むために喉を大きく動かした。




「そのまま、言葉するのはボクだけでいいから。日紫喜は否定だけはしないで」


間宮くんは、もう一度こっちに向き直って、わたしを見下ろした。


「ちゃんと、日紫喜のことを好きになったよ。違っていても、そんなこと関係なく、寧ろ違っていてくれて良かったと」


その言葉の後ろにある間宮くんの気持ちを、きっとわたしは全部分かってあげられないんだろう。


「物怖じせずに対せるくせに臆病なところも好きだった。――去年の文化祭。ボクたちのクラスのお化け屋敷に来たときとかも、他の女子なら鬱陶しい恐がりかたも日紫喜だから愛しかった」


文化祭を思い出す。確か、小夜と見学をしていたら受付にいた百瀬に捕まったんだ。絶対に嫌だという訴え虚しく、両脇を小夜と百瀬によって逃げ出せないようにされて連行されたんだった。そうだ。間宮くんは去年百瀬と同じクラス。


「……あれは、怖かった。左右ガードだけじゃ足りなかった」


「ボクは、蒟蒻を揺らす係だったんだよ。――守ってあげたいと思うだけではなく、そうしていればよかったな」