「ありがとねー。それと、大輔までもがいつの間にか立候補してくれたボディーガード? 表現大袈裟だけど、それも言わないでくれて良かった」


「だよね。みのりの印象が悪くなるところだった。危ない危ない」


引き返してきた小夜がわたしたちのところで泳ぎを止めて会話に加わる。


「っんだよ、小夜」


「女子の世界は歪んでシビアなのよ」


「そうそう。わたしごときにボディーガードなんて生意気だってこと。それに、もし大輔と百瀬に好意ある子がいたら、いじめられちゃうかも」


流れで行き着いてしまった考えだけど、女子の世界ではかなり有り得ることだ。


怖い怖いと、わざと身震いする大輔を陸に残して、わたしはプールへ飛び込んだ。


塩素のツンとした匂いが大好きだ。一旦潜った全身をすぐに仰向けで浮かび上がらせる。この状態のまま太陽に焼かれる行為は、日焼けさえなければいつまでだってしていたい。


「大丈夫よ、みのり。幹二君を好きなのは大輔。逆もまた然り、だったり」


小夜がこういう冗談を言うのは珍しい。きっと今日の部活内容が自由に泳いでいいからテンション上がってるんだろう。ま、だからわたしも百瀬に断りをいれてまで今日は出席したかったんだけど。


百瀬も含めてありがとう。みんなとこうしているのは、とてもホッとする。


「そうかも。百瀬と大輔は相思相愛だもんね、昔から。ゴボウと豆モヤシの交配って新種だわ、きっと。百瀬は勤勉家だから、リードしてもらえば良いものが完成するよ」


わたしも調子に乗って小夜の冗談に参加したものだから、さらに身震いを激しくさせた大輔は、反対側の後輩のところへ逃げていった。