そっと、わたしの首筋にあるガーゼの上から、百瀬が傷に触れた。


「……ごめんね。そんなことをしてまで消したくなるような傷を、僕は好きな子にしちゃった……。本当にごめん」


「っ!?違っ、違うの百瀬っ。事故なの」


「本当に?」


見つめられると全部見抜かれた気分になる。百瀬は、わたしの瞳が揺らいだ瞬間を、きっと見逃さなかっただろう。


卑怯で我が儘なわたしを、ちゃんと懺悔しなければいけない。


「事故、なの。……事故だったけど、もしかしたら、駄目なわたしが無意識にそうしちゃったのかもしれない。でも、嫌だったから消したいとかじゃなくって……恥ずかしく……て。…………でも、消えちゃってから後悔した。永久にでも構わない。百瀬がくれた跡が残ればよかったのにとか後悔してるの、わたし」


ごめんなさい。ごめんなさい……本当の気持ちに添えないなんて、なんてわたしは……。


「百瀬の跡が……記憶には熱さも感触もちゃんとあるのに、実感がなくなっちゃって、寂しくて寂しくて仕方ないなんて……本当、どうしようもない。わたし最低」


百瀬のことが、好きで好きで、どうしていいか分からなかったの。