「これは恋だと、胸を張っていいですよね?この気持ちを、否定しないでくれますか?」
百瀬の肩は、金子さんが流す涙で濡れていた。蒼白の表情は、わたしと二人のときよりも和らいでいて、恋の色に染まってた。
「――うん。誰も、金子さんを否定なんてしないよ」
何度も何度も、百瀬は頷いていた。その背中しか見えていないけど、百瀬はきっと、とても優しく微笑んでいてくれるんだろう。今の金子さんが望むことだと、わたしには分かる。
「なら、百瀬さんを私にください。私はもうすぐここからいなくなるのですが、私と一緒に来てください」
金子さんの願い事は、百瀬に、わたしに、宛てたものだった。
その願い事が叶った先の未来を想像した。
それは考えたくもない未来。そんなことっ。
「駄目っ!!そんなの絶対に嫌っ!!」
気付けば、わたしは震えながら叫んでいた。
「嫌だ嫌だ嫌だっ!!百瀬を連れていかないでっ!!わたしを好きじゃなくていい、傍にいられなくてもいい、口をきいてくれなくても無視されてもいいからっ!!生きてっ、いてくれさえすればいいからっ、百瀬はこっち側にいてっ!!行かないでっ!!」