そんなこと分かってる。助けにいって抱き起こすのは当然だ。冷たいだろう身体に自分のカーディガンを掛けるのも。
けど、わたしはショックを受けてしまった。
目の前の、金子さんと百瀬の光景に。
「早くっ」
「戻ろうなんて、百瀬さんまで言わないで下さいね……」
その先を拒否された百瀬は、やっとわたしに振り返り。
「みーちゃん。どうして金子さんをこんな……」
なんで、こんなに足がすくむんだろう。
「ごっ、ごめんなさい」
大丈夫だと思ってしまった自分をとても恥じた。わたしは……いつも……今でもまだ、自分のことしか考えられない。
「……違い、ますよ、百瀬さん。全て、私が仕組みました。この場所も、百瀬さんが、私たちを目に留めて、こうしてやって来る、のも」
金子さんは、わたしを決して貶めたりはしなかった。――素直で嘘は嫌いで、とても凛々しい人。
わたしからは完全に見えなかった百瀬に抱き抱えられた金子さんの姿。それが百瀬越しに現れる。金子さんが百瀬の首に腕を回したからだ。
「運命だとか、この瞬間の為だったなどと言いません。これは、ただの私の思い込みで、恋では、なかったのかもしれません。――けれど本当に、私は百瀬さんのことが大好きでした」