――……



放課後、プールサイドで大輔が絡んできた。それもにやけた顔で。からかう気を隠す様子は一切なくて少し腹が立つ。


「幹二と密会してたって?」


「……」


教室まで行って、百瀬に帰りのことをお願いした時のことだろうけど、密会という文字を辞書なりで検索しろと言いたい。


「オレ、トイレ行ってたからいなかった」


「いないことぐらい見ればわかったっていうのっ。バカばっかだ、みんな」


わたしが百瀬と話す光景なんて日常茶飯事だ。なのに……バカばっか。


「……で、五組ではそんなことで盛り上がってたの?」


「いんや。ちょっとだけ」


「そう……」


そこそこな、と加えた大輔が頷く。結局それはどっちなんだと突っ込むのはやめた。バカらしいから。


「ひとつ面白いことがあると、みんなそれに乗っかっていきたくなるしなー」


何処かで耳にした同じような言葉は、今まさに横を静かに泳いでいった小夜のそれだ。


「……だよね」


「ま、でも、じいさんとみのりのことなんぞ、吹聴することでもないしな。オレと幹二のボディーガードの件も、必要もないから別に何も言わなかったぞ。幹二も受け流してたから安心しろよ」


補足されるほど、わたしはふたりのことを疑ってはいない。


大輔と百瀬は、不謹慎に盛り上がることにあまり首を突っ込まない。わたしとは違う。だから、訂正をしてもいい立場だと思う。ふたりにだったら、わたしはその五組の現場で訂正されても構わなかったけど、きっと、色々と考えを巡らせてくれた結果がこうだと、とても嬉しい。


おじいちゃんのこと、三人にはもちろん詳細を話した。協力を申し出るのだから当然のことだと思うし、情報の拡散の線引きがわたしたちは似ているから、安心して打ち明けられたんだ。