「いったいいつからなのか……ここの生徒だっのか、偶然行き着いたのか、事故なのか病気なのか、それらを忘れてしまったのか、最初から私の中になかったのか――」


物語を紡ぐように、金子さんは閉じていた唇を開いた。


「――気付けば、私は図書室にいたのです。独りで過ごす時間を寂しく感じて、多くの方に話しかけました。けれど、誰も何からも応えはなく……。けれど、何故か百瀬さんには気付いてもらえた。初めは視界に映るだけでしたけれど、次第に距離は縮んでいけた。嬉しかったのです。幸せでした。返ってくる声に心が震えました」


正直、金子さんの言うことが真実なら、わたしはそういう類いの存在は物凄く苦手で……けど、何故か今は恐怖よりも金子さんの言葉が心に沁みてくるほうが大きい。




「金子、さん――?」


金子さんが胸を両手で押さえる。その表情は俯いてしまって知らない。


「……運命だと、あの人に出逢う為に私はいたのだと思うでしょう?逆も然りと想像するでしょう?その声を、笑顔を、沈んだ肩を、身体も心も全てっ!!……望んでも……いいで……しょ……」