――……


朝、鏡に映った首筋には、永遠に消えそうもない百瀬の噛んだ跡がくっきりと残っていた。百瀬が離れていってしまってからずっと熱を持ち続け、わたしをどうしようもない気持ちにさせた跡。


どうしよう、どうしたらいい?と動揺しながら、 でも学校はもう休んではいけないと準備をしていたら、髪をストレートにコテで伸ばしていた手が不必要に動いてしまった。二百度以上の高温なコテは、そうしてわたしの首筋に――百瀬の跡が残る、左の首筋に。


……――




「……みのり、大丈夫?」


そっと、小夜が囁いてくれる。わたしにだけ伝わるトーンで。


「心配かけてごめん。痛いのはそうだけど、平気。これ……わざとじゃないんだ。バカな失態」


からかってきた男子たちはそそくさと教室を出ていった。このままでは、自分たちが悪者として非難されそうな雰囲気だったから。


ちょっとだけごめん――後ろ姿に謝った。


「その状態、あたしのおでこより相当酷いよ~っ。ちゃんと冷やした?」


と結子ちゃん。


朝、ぎりぎりまで冷やしたとはいえ短時間のこと。空気に触れて痛みが増した。


「やってはきたんだけど。ちょっと、保健室行ってこよっかな」


周囲全てに頷かれて、わたしはホームルームから逃れるように歩き出した。