キスマークだと囃した声の方へ自然と足が向いた。我慢が効かなくなって頭に血液全てが逆流してしまったみたいで歩みが止まらない。


すぐに、わたしはそれを言ってきた男子数人に辿り着く。


「――、キスマーク?」


口角をとりあえず上げただけの、他はどう見ても怒っているわたしが不敵に問うた。


「なっ、なんだよっ!!ちょっと言っただけだろ。そんな怒るってことは図星なんじゃねーの?」


この場に、この状況を受け流して収める器量の人間はいなかった。わたし含め。


「別に。面白く茶化すのが腹立っただけ。……ああ、でもそうだよね。誤解は解いておかなくちゃ――ね?」


「みのりっ!!」


どうしてこんなに腹が立ってしまったんだろう、きっと、自分の不甲斐なさに逆ギレしてしまったんだ……本当、最低。


わたしは、小夜が制止する声より先にガーゼを派手に引き剥がして、囃した男子始めクラス中に、左の首筋を晒して見せた。


「っ!!」


何人かが、わたしの首筋の惨状に驚きの声。


それはそうだ。朝のわたし自身も相当引いたくらいだったんだから。そこからさして時間は経っていないからまだ乾いてもいない痛々しい状態なんだろう。


「信じてくれた?」


男子たちはただ頷くだけだった。


わたしの左の首筋には、本当に、大きな大きな火傷の跡があった。