「おはよー」
「おはよう」
そこかしこで交わされる挨拶に加わったり眺めたりしながら校舎内を進むと、もうそこはすぐにわたしのクラスで。
一度、立ち止まってから、教室に足を踏み入れた。
「あれ~?みのりマフラー珍しいねっ。しかもなんで巻いたまま?」
隣の席の結子ちゃんに指摘をされる。
「寒い、から?」
「そっかそ~だよね。でもそのままはないでしょ」
「っ、……だよね~」
そんなマフラーぐるぐる巻きなわたしの姿は、そんなに違和感があったんだろうか。いつもしっかり防寒しない自分を恨んだ。
でも、結子ちゃんの意見ももっともだ。このまま一日過ごすなんて無理に決まってる。…………傷にも、悪影響だ。
マフラーの上から左の首筋に手をあてると、脳みその全部があの時のことを思い出した。同時に、激しい痛みに目を細める。
「……」
意を決してマフラーを首から外した。
「えっ!?みのりっ!!」
案の定、結子ちゃんが驚く。予想外だったのは、結子ちゃんの声があまりにも大きかったために、クラス中にわたしの状態が知れ渡ったのが一瞬だったということ――。