火曜日。
いつもより一時間早く起きた朝、誰も入ってこない間に洗面所で暫く立ち竦んだ。
お母さんの足音に気付いて二階の自室に逃げ込み、そこから時間ギリギリまで籠ってしまったものだから、わたしは慌ててマフラーを巻いて玄関から飛び出した。仕方なかったんだ。色々と、難しい行程があったものだから。
「っ!!、……」
緊張で止めた呼吸は、目的の人物の姿がやっぱりいないことを確認した途端に勝手に再開し、大きく吸い込み過ぎた冬の空気のせいで鼻の奥が痛くてたまらない。
……連絡、くれたもんね。
それを伝えることをしてくれた百瀬の心を考える。その優しさに泣いてしまいそうになる。でも、それをしていいのはわたしじゃない。
はらりと落ちてきたマフラーをさっきよりももっとぐるぐるに巻き直し、待ち合わせの場所に急いだ。
「おはよう、みのり。大輔はもうすぐよ。幹二くんは――」
「……うん。わたしにも、メールくれた。日直って」
「そっか。風邪治ったみたいだし良かったよね」
「うん。安心した」
暫くして大輔も合流し、昨日のことなど持ち出そうともしない二人と登校した。