「……そんなんじゃ、ないんだ」
「付き合ってたらもっと気を利かせたのに。――えっ?で、何がそんなんじゃないの?」
「小夜。お前もう少し賢いだろ。勉強だけって……。べつに、みのりたち付き合ってねえぞ」
「えっ、そうなのっ?」
大輔も詳しくは知らないみたいだった。なら、どうして……。
頭上に疑問の雲が立ち込めるわたしと小夜に対して、ここぞとばかりに大輔が弁を奮った。
「ただ単に、幹二はずっと前からみのりが好きだったろ。それこそ、オレと小夜が幹二と知り合った頃から」
「えっ、それって小学校入学とかそんな」
「だよ。覚えてないか?初め、オレら幹二に敵視されてたろ。あれはみのりに近付く奴を排除しようって幼くもやってたんだろうよ。オレなんか男だからって小夜より酷かったんだからな」
「……気付かなかったわ……」
「お前ら、マジでバカ。幹二は可哀想だ。こんなに報われないなんて」
「あら。愛情が足りてなかったのかもしれないじゃない」
「なわけあるかっ!!鬱陶しいくらいだったぞっ」
違う、そうだと押し問答が始まってしまった。
「足りてなくはないからっ!!」
訂正だけはしておきたくて思わず吠えたわたしに、少しだけ、小夜は納得し、大輔は満足そうだった。
場違いな感情が生まれる。百瀬もわたしも、とんでもなく幸せ者だと。