職員室の窓から見た外の様子は――そこに結界があるかのように、おじいちゃんは、校門から中へは入ってこなかった。
なんとかなると思った行動は結局的外れとなる。
放課後。先生から返ってきた対処法は、静観、だった。
……おじいちゃんは、最近お身体の加減が上手い具合ではなくなってきた、らしい。心が、気持ちが、本来在るべきところに在ってくれなくなって、曖昧な世界で過ごしてしまうことが多くなってしまって。上手く日常を過ごせない時間が出来てしまうのだという。それ以外は、年齢よりもきわめて健康。
本人含め、ご家族で話し合った結果、ここからは通えない、少し遠くの療養施設へおじいちゃんは引っ越すことになったらしい。
それが約三ヵ月後。
生まれてからずっと、学生時代も、教職の間も、この土地で過ごし、ここを愛してきたおじいちゃん。寂しい思いを抱えながらも、去る時は悔いなんてものを残していかないよう、日々を過ごすことにしたらしい。
それが、あの花束とわたしらしい、なんて、どういうことかは全くわからないけど……。
内情をわたしにまでこんなに細かく教えてはくれなかったけど、おじいちゃんのご家族と電話で話す先生の横で張り付き、漏れ聞いた事情だった。
色々聞いてしまって、正直、余計にどうしていいかわからなくなってしまったけど。
でも、あの恐怖は……
……、あれ? でも、もうすぐ夏休みで登校回数は減るし、みんながいてくれるし、平気? ご家族が気をつけてくれるなら、今日みたいなトラブルもそうないだろうし。
先生に一通り悪態をついて発散したからか、悔しいけど、その場のわたしは少し簡単に安心してしまった。