「――髪、いつもさらさらしてて綺麗だよね」
とかすみたいに髪を整えられる。はらはらと口元に流れてきた髪はリップを塗っていた唇に引っ掛かり、それを直しながら左耳にかけられ。
「……っ!?痛っ!!」
その瞬間、天国にでも昇ってしまいそうなくらいの激痛が左の首筋に走った。同時に、同じ場所に百瀬の熱い吐息がかかる。
「ずっと、みーちゃんからの答えを待つよ。けど、僕は無かったことになんか死んでもさせないから」
熱いものは遠ざかっていき、晒された首筋には冬の空気と痛みが主張を始める。
「多分、だなんてもう絶対言わせないよ。怖がったって信じさせる」
痛みは、まるで吸血鬼みたいに、百瀬がわたしの首筋に歯を立てていったからだった。
「ずっと……ずっと、その跡が消えなければいい。痛みも傷も残れば、僕を忘れないだろうから。永遠に意識し続ければいいんだ。僕がみーちゃんを好きだって」