「……けど、僕は、そんなみーちゃんも含めて…………。――、ちょっと来て」
「えっ、えっ?」
近くの空き教室の中へ引っ張られた。
教室内は遮光カーテンの隙間から僅かな明かりだけが線で差し、線の上を舞う埃が見える。片隅には、机や椅子が積み上がっていた。
暗闇に慣れない目がちかちかとした模様を視界に映す。
「ひっ!?」
ようやく薄暗い全体像を把握できるようになったとき、頬に冷たい何が触れた。
「――ここ、間宮に触られてたね」
「あっ……百、瀬」
「ここもだ」
見られてたんだ。冬の空気よりも凍えた百瀬の手が、指が、さっき間宮くんになぞられた箇所を滑っていく。
「……っ」
しばらくその行為は続き、いつの間にか、触れられたのは百瀬が初めてのところまで――まつげをそっとなぞられて思わず目を閉じた。唇で感じた百瀬の指先はわたしのそれよりもずいぶん武骨で、息が漏れてしまう。
「いいの?こんなに触られて。僕は彼氏でも何でもないのに」
「……っ、ぁっ」
もうとっくの前に解放された手は自由で、足だってどこにも挟まれていないのに、首筋にある百瀬の指から与えられる刺激を抑えることしか出来なかった。