どこまでも続いているみたいに感じた、しんと静かで冷えた廊下を、何も物言わず歩く。
一歩前を、わたしの手を引いて歩く百瀬は、振り返ったときにはまたいつもみたいに優しく笑おうとするんだろだろうか。
――いけない。そんなの。そんなことさせたら。
全体重をかけてその場で踏みとどまる。繋がれていた手が一瞬ぐんと張り、転んでしまいそうになるのをお互いに堪えた。
「……」
「、みーちゃん?」
「駄目、だよ。百瀬はわたしに優しすぎる。さっきのだって、怒ったのは当然じゃない」
いつか、誰かに言われたのはその通りで。わたしは優しくされてはいけない。
やっと振り返ってくれた百瀬は、取り繕おうとしていた表情を保つのをやめて、もう笑おうとはしなかった。ううん。自虐的な笑みだった。
「間宮に、言われたこと、本当にそうだよ。……腹が立つことはたくさんだ。けど、僕は何をみーちゃんに怒れるんだ、ってね……」
「そんなことっ」
「でも、それを承知で言ってもいいなら、……みーちゃんは、何で、間宮から逃げなかったの?あのまま続いてたらどうするつもりだった?他のヤツになんか……触らせないでほしかったよっ!!」
それらの言葉が我慢していた心を解放するみたいに、繋ぐ百瀬の手には力がだんだん入ってくる。
男の子の握力で強く握られたわたしの手はとてもとても痛くて。でも、はなさないでと思ってた。