――連日降り続いた雨が止んで爽快だった。
朝練がなかったから時間に余裕もあり、長い髪を念入りに整えられた満足感で気持ちよく登校していた時、おじいちゃんに会った。
「おはようございますっ」
「……」
あれ? と思った。バス停のベンチに座るおじいちゃんからいつもみたいな返事はなく。でも、慈しんでくれているような表情は変わらずだった。
会釈をし、通り過ぎようとした時、突然おじいちゃんに腕を掴まれ、背中側に隠していたらしい大きな花束を差し出された。
キレイなキレイな、青と白の花束だった。
「っ!?」
驚いて、怖くなって、掴んできたその手を振りほどいてしまった。
力任せのお互いの行為は、あとに痛みが残っただけ。
きっとお互いに。
けど、おじいちゃんは笑んだままで、再び花束を差し出してきて。
わたしは、とりあえず走って逃げた。
振り返ったら、おじいちゃんも花束を持ったまま追いかけてきていた。その八十代とは思えない脚力で。途中、何人も女生徒はいたのに目もくれず、わたしだけに走ってきて。
けど、現役高校生の足に敵うなずはなく、次第に距離は開いていく。
その時、前方に百瀬と大輔を発見した。
「ちょっと助けてっ!!」
ふたりの間に割り込んで肘を絡みつけ拉致して校内へ逃げ込み、職員室に直行した。盾は確保したし、ここなら先生もいるしなんとかしてもらえると思った。