「ごめんね。みーちゃん」
百瀬が何に、なんで謝っているのか分からない。きっと悪いのはわたしなのに、明確に謝れないから何も返せない。
一歩下がって百瀬の背中を見る。
その背中越しにはいつもと同じ通学風景。前方の交差点には、小夜がわたしたちを待っていて、もうすぐそこには大輔が走ってくる。
「おはよう。みのり。幹二くん」
「おはよう」
「小夜、おはよう」
「ねえ、幹二くん。ちょっとこの文法で訊いておきたいんだけど」
「僕で分かるかな」
「みのりよりは幹二くんでしょう」
「それもそうだ」
「幹二~っ。とりあえずオレの脳ミソに単語を詰め込んでくれっ」
「うわっ。開口一番にそれっ? 大輔には抜けていくだけだから、僕は無駄な労力は割きたくないな」
ねえ、百瀬。
百瀬の口から聞きたいことがあるんだけど。
わたしの問題だから……言ってしまったあの日からなくなった。
それを要求するなんて、なんてわたしはおこがましい……。