心の中、曇天模様が顔を出し、慌ててそれを追いやった。もう少し、もう少し待ってとお願いしながら。
ちゃんと、考えるからまだもう少し。
「うんっ、英語。それでテストも終り! 明日は土曜日だし休みだから怠けるの決定なんだ」
「そうなんだ。――僕は、ケーキの材料や道具でも買いに行こうかな」
「っ」
「もしかしたら街から小麦粉や砂糖が買い占められるかもしれないし、やっぱり練習は必要だ」
「……」
言葉を発せないでいると、頬っぺたに久しぶりの感触。わたしより大きい手のひら。
「風邪ひくよ。いくら薄着のみーちゃんでも。冷たいからマフラー貸そうか?」
一時期、間隔が短くなってきていた抱きしめられるという行為は全くなくなった。
いつから? だっただろう。
「っ、ううんっ。いいっ。大丈夫っ」
「――うん。そっか」
いつから? なんて、覚えてる。百瀬が怒った時からだ。
わたしの問題だから……そう、わたしが言った日から。