「……止まったから、離れてほしいんだけど」
「そんなに近い距離ではないよ。振り返って確めればいい」
無理だ。そんなことしたら、きっと目の前には間宮くんの胸辺りが。
何故か、わたしは囲まれてしまった。黒板に前方を。左右と後方は間宮くんによって。
「離れて」
「二度も目の前で泣かれると構いたくなる」
「気に、なさらずに」
これ以上言うことを聞き入れてもらえなければ、黒板を引っ掻いてでも攻撃しようと決めた。
「――、分かった」
けど、あっさりと受け入れられる。
離れてくれた間宮くんは窓際にもたれかかり、部活に勤しむ人を見下ろした。
「間宮くんはいたずらがすぎると思う」
そんな非難は軽く無視され、まあ聞けと黙らされた。
「ボクさ、初恋が中学二年生なんだよね」