泳ぐことのない夏以外の水泳部の活動時間をはそう長くない。


正座の痺れから解放されてから、先に支度を済ませた小夜たちを追う。


「みのり」


「わたしも帰る」


「まだ動けなさそうだったし、もう置いてこうかって話してたんだぜ。な、幹二」


「言ってた。そんなことはしないけどね」


「っ、……百瀬」


大輔が電話したようだった。


「ほら、帰ろう。みーちゃん」




いつもと変わらない帰り道。田舎の農道では秋の虫たちが羽根を鳴らす。田んぼは、もうとっくにお米の収穫が終わっていて、切り取られた稲の根元だけが整列している。


いつもと変わらない帰り道が、少しだけ異空間に感じた。


少しで済んだのは、わたし以外の人のおかげ。


勝手に、百瀬の変わらない態度に辛くなった。