ベアトリスはパトリックと手を繋ぎながら帰り道をぼうっと歩く。
 前をしっかり見てなくとも、パトリックに引っ張られることでぶつかることもなく安全に歩くことができた。
 パトリックについていけば何も心配することはない。それがとても楽に思えた。だが表情は魂のない人形のようで感情に欠けていた。
「今朝、話したことだけど」
 パトリックは敢えてそのことに触れるが、それ以上聞きたくないとベアトリスは遮った。
「もうどうでもいい。私どうかしてたんだ。私には自分で勝手に思い込んで妄想する癖があるみたい」
 パトリックはベアトリスの変わりように、却って心配になった。心が閉ざされ生気がなく弱々しく感じる。
「なんかベアトリスらしくないな。だけど僕も少し反省してるんだ。君に不安を持ちかけてしまったんじゃないかって」
「ううん、そんなことない。お陰で自分がどうすべきか答えを見い出せた気がする。私にはパトリックが必要なんだって思えたから」
「えっ? 僕が必要……」
「うん。甘えちゃだめかな」
「そんなこといいに決まってるじゃないか」
 パトリックは舞い上がり嬉しさで顔がにやける。ベアトリスが本当に抱えている気持ちに気づくことなく、目の前の幸福で頭が一杯になっていた。そしてヴィ ンセントに勝ったと優越感に浸る。
 パトリックが喜んでいる側で、ベアトリスは手を引かれて必死に後をついていく。もう周りすら見ていない。
 街路樹がきれいな花を咲かしていても、人懐っこい犬とすれ違っても、鳥のかわいい囀りが聞こえようとも、感心をなくしていた。
 パトリックの手を強く握り、依存という逃げ道をベアトリスは選んだ。
 その一方で、ベアトリスがパトリックの手を握った光景にショック受け、ヴィンセントは家に帰っても何もする気がおきず、ベッドの上でやるせない気持ちを抱いてうつぶせに寝ていた。
 日が暮れても電気もつけなかったので、リチャードが帰宅したとき異変が起こったと勘違いされる始末だった。
 リチャードは警戒しながら家の中へ入り、辺りを調べ、ヴィンセントの部屋を確認したときだった、ベッドの上で手に血がついたヴィンセントが寝転がっているのを見ると顔を青ざめた。
「ヴィンセント、大丈夫か」
「ん? なんだ親父か。ただ寝てただけだよ。何慌ててんだよ」
「その手の傷はどうした?」
「心配ねーよ。ちょっとぶつけただけだから」
「またコールが襲撃してきたかと思った。あれから奴の動きが止まってるだけに、いつ襲ってきても不思議はない。そっちは何か変わった動きはないか。奴ならお前もターゲットにしているはずだ。ベアトリスの存在は気づかれてないだろうな」
「ああ、目立った動きはない。ベアトリスの存在がばれれば奴はすぐに襲ってくるはずだ」
「奴の行動を決め付けるのはよくない。私もそれで危ない目にあった。奴は何を企んでいるかわからない。目を光らせておいてくれ。もうすぐプロムもある。大勢集まるところで影でも仕込まれたものが紛れ込んだら大変だ」
「ああ、そうだな」
 ヴィンセントは投げやりに答えた。
「どうした。なんかあったのか」
「なんでもねーよ」
「お前、浮き沈み激しいな。どうせ原因はわかってるけどな」
 リチャードは仕方がないと同情する表情を見せ部屋を出た。
 ヴィンセントはまたそれが気に食わないと、枕を投げつけた。虚しくドアに当たっただけだった。
 その頃ベアトリスはパトリックと食事の用意をしていた。パトリックが全てを教えてくれる。その通りに動き、パトリックのすることをじっと見ていた。
「ベアトリス、それ砂糖だよ。塩はこっち」
「あっ、ごめん。私はパトリックが居ないと何もできそうもないね」
「ああ、それでいいんだ。僕は頼られるのが好きだから、僕についてくればいいんだ」
 パトリックはえへんと咳払いをわざとして、胸をはって背筋を伸ばす。
 ベアトリスはそれに合わせようと笑顔を作るが弱々しかった。
「それにしてもアメリア遅いな。仕事が急に入ったのかな」
 パトリックは腕時計を見ながら呟いた。
「パトリックがいるから、安心して仕事ができるんだよ。今までだったら、私のことが心配で定時間に終わらせようと無理してたのかもしれない。私って本当に重荷だったんだろうな。一人で何もできないんだもん」
「どうしたんだ。自信喪失みたいなこといって。ベアトリスは昔、何事にも向かって一人でなんでも解決してたんだよ。怖いもの知らずなところがあった。こっ ちが見ててハラハラしたぐらいだった。好奇心溢れすぎて余計なことに首突っ込んで、ベアトリスの両親も後ろからあたふたと追いかけてたっけ」
「やめて! もう過去のことはいいの。あまり覚えてないし、知りたくもない。パトリックだって過去よりも今が大切だっていったじゃない」
 過去の自分の記憶がないだけでも惨めになるときに、昔の自分と現在の情けない自分を比べられるのはベアトリスには耐えられなかった。
 その上に恐怖心を植えつけられるほどの真実が何かもわからないまま、それを知ることを放棄してまで自分を守ろうと必死になってしまう。
「ご、ごめん。でしゃばりすぎた」
「ううん、パトリックは何も悪くない。私こそ叫んでごめん」
 ベアトリスは全てを受け入れて欲しくて、パトリックに抱きついた。抱きつくことでまた依存しようとしていた。何もかも忘れるために。
 パトリックもしっかりと受け止めた。
 急激なベアトリスの変化だった。
 自分が仄めかした真実にベアトリスが怯えているんだと直感的に感じていた。
「ベアトリス、安心して。僕がずっと側にいるから。僕が全てのことから君を守って見せる。何も心配することはない」
「うん……」
 ベアトリスは返事をするも、目はうつろだった。
「それにしても、アメリアは遅いね」
 パトリックは話を振って、この時の雰囲気を変えようとしていた。
 アメリアはその頃、予期せぬ渋滞に巻き込まれ、迂回をして遠回りをせざるを得なかった。
 信号に何度もひっかかり、すぐに帰れずアメリアはイライラしていた。
 そんな時、サイドウォークを高校生らしい男の子が、ロングストレートの黒髪の女性に腕を組まれながら後方に向かって歩いているのが目に入る。
 女性が年上に見えたので、アンバランスなカップルだと暫く眺めていた。
 信号が変わり、アクセルを踏む瞬間、ふとバックミラーを見ると、赤毛のコールのような姿が目に飛び込んだ。はっとして後ろを振り返るが、そこにはコールの姿はなく、さっき見たカップルが歩いているだけだった。
 もたもたしてると思われ、後ろからクラクションを鳴らされて、アメリアは慌てて車を走らせた。見間違えたのかと半信半疑ながらコールが身近にいることを再認識させられて寿命が縮まった思いだった。
 暫く車を走らせもう少しで帰宅というときだった。不意に見たバックミラーに写ったものに再び突然肝を冷やされた。
「ブラム。脅かさないでよ。それに車の中ではシートベルト締めてよね」
 後部座席にベールを被ったブラムが腕を組んでふんぞり返って座っていた。
「麗しのアメリア。君は相変わらずつっけんどんだ。まるでトゲに囲まれたバラのようだよ。美しいが近寄ると痛い目にあう」
「ところで要件は何? いい話? それとも悪い話?」
「理由なしに君に会いに来てはいけないのかい? 折角地上界に降りているんだ、また昔みたいにどこかへ一緒に出かけないか。あの時の君は私に甘えてとてもかわいかった」
「そんな昔のこと。それに私はあなたに裏切られたも同然。あなたは私を捨てた」
「誤解だ。だがそう思われても仕方ないことはしてしまったのは認める。それでも心の底ではまだ私を愛してくれてるだろう」
「そんなことはどうでもいいわ。とにかく今はコールのことが気がかり。何か情報を得たの?」
「安心しなさい。コールはベアトリスのライフクリスタルを手に入れられない。彼は失敗する」
「それに越したことはないけど、なぜそれが判るの?」
「私の勘とでも言っておこうか」
「ちょっと悪ふざけもいい加減にして。どうしていつもそんなにいい加減なの。それにいつも振り回される身にもなってよ」
「私はいつも真剣だよ。昔からずっと。そして今回も。君を愛していることだって嘘偽りはない。専ら君に拒否されて悲しいけどね」
「よく言うわ。私が本当に側にいて欲しかったときあなたは私から去ってしまったじゃない」
「それについてはすまないと思っている。私も辛かった。でもいつか理解して貰える日が来ると思ってる。その日はそんなに遠くないかもしれない」
「さあどうかしら。それに別れたあの人のことまだ引きずってるんでしょ」
「エミリーのことか……」
「過去にあなたが一番愛した人だったわね。あなたはあの人に愛想つかされて…… そして捨てられた。彼女も苦しんでいたわ。そして彼女はもうこの世にはい ない。自殺だった…… あなたと彼女のせいで、その後、私はかき回されてしまった。あなたが中途半端なことするから私も不幸になってしまったわ」
 嫌味を込めて意地悪くなりながらも、アメリアは言ってしまったことを悔やむかのように顔を歪ませた。
「全ては私の責任だ。だがすまないが彼女のことは君とは話したくない」
「もうなんとも思ってないわよ。私だっていつまでも過去のことにこだわりたくないの。だからあの時、私はあなたの言うことを聞いた。その見返りにいつまでも私を付きまとうあなたと縁を切りたかったから。でもそれがきっかけでまだ縁が続くなんて皮肉なものね」
「あの時、リチャードが現れそして邪魔されて、ベアトリスのライフクリスタルを奪い損ねたことか」
「そうよ、あなたは私にベアトリスを抹殺しろと命令したも同然だった。ライフクリスタルが彼女の命そのものだなんて知らされずに、ただホワイトライトの資格を奪えとだけしか言われなかった。リチャードがあの時現れなかったら私はベアトリスを知らずに殺していたのよ」
「ダークライトのリチャードがホワイトライトを救った…… 本来なら奪う立場なのに」
 ブラムは軽く笑った。
「何がおかしいの。あなたたちが勝手に作ったルールでベアトリスは命を脅かされてるのよ」
「仕方ない。それが我々のルールだから。彼女は気の毒だが運が悪すぎたとしか言えない。彼女は我々の世界では不吉の存在であり締め出され、この世界では、 ダークライトの格好の餌食となり力を奪われれば我々を脅かす懸念となる。抹殺は苦肉の策。ホワイトライト界の秩序を保つには仕方がない。彼女がホワイトラ イトの力を目覚めさせなければ、10歳を過ぎれば自然と力は消滅し、普通の生活が約束されていた。そのギリギリでヴィンセントによって目覚めてしまった。 何もかも奴のせい」
 アメリアは反論する言葉を失ってしまった。だが淡々と語るブラムに憤りを感じる。
「だから私達は必死でベアトリスを守りたいの。抹殺なんて絶対にさせない。あなただって、本当はそれを避けたいんでしょ。だからベアトリスのライフクリスタルを自ら奪えずに理由も言わず私に押し付け、卑怯な手を使った」
「卑怯な手か…… まさにその通りだ。私は卑怯ものさ。君の言う通りだ。命令されても私は、自ら、同士の命は奪えない。しかしこれも私の仕事でありどんな 方法をとってもやり遂げねばならなかった。半分ホワイトライトでありながらそのことを良く知らない君の存在はあの時ありがたかったよ。結局は失敗してし まったがね」
「あなたってどこまでも冷血なのね。目的を達成させるためには手段を選ばない」
「そうさ、その通りさ。だが君は、こんな私の助けを求めた。君こそ目的のためには手段を選んでないじゃないか。みんなそうなんだよ。優先順位ってものがある。何かを犠牲にしてまで、何かをやり遂げたい。そういうものじゃないのかい」
「そうね。そうかもしれない。でもあなたはもう私達に加担したのと同じ、上のものにばれればあなたの地位も危うくなるんでしょ。あなたが自らの手で使命を果たせないのなら、私達と一緒にベアトリスを守るしかない。それがあなたの今の優先でしょ」
「だからできる限りのことをしているじゃないか。だが派手に手助けができない、君の言う通りばれれば私の立場が危うくなるからね。私は最後の手段で何かあれば自ら手を下すが、それまではサポートという形を取らせて貰う」
「それでもいいわ。手助けが必要なのは素直に認める」
「しかしいつまでこういうことが続くのかね。君にも限度というのがあるだろう」
「その後はパトリックが引き継いでくれる。二人はそのうち……」
「結婚っていうことか。パトリックもあの時隠れて我々のやり取りを見ていた唯一事情を知るディムライト。しかもベアトリスに惚れている。中々好都合な存在だ」
「そうなの…… あの時彼もあそこにいたのね。だから何もかも知っていたと言う訳ね」
「しかし、ベアトリスは果たして結婚に前向きなのかい? ヴィンセントもこのまま黙って見てるとは思えないが」
「それこそあなたが言う、何かを犠牲にしてまで何かをやり遂げるってことじゃないのかしら。ベアトリスを守るにはヴィンセントには理解して貰うしかな い。ヴィンセントが近づけなければベアトリスはいずれ諦め、パトリックを受け入れるようになるわ。あれだけ愛されて大切にされたら女っていつしか心なびくものよ」
「君もそういう人がいるのかい?」
「もしいたらあなたは気が気でなくなって心配?」
「ああ、もちろん」
「そういうときだけ都合がいいもんだわ。さんざん放っておいたくせに」
 嫌味をちくりと言いながらもアメリアの表情から寂しげな陰りがみえた。
 アメリアの車が家に着くと、ブラムは無理に作ったような微笑みを浮かべてミストを蹴散らすように消えていった。
 アメリアはドライブウエイに車を止め、消化不良の気持ちを押さえこもうと暫くハンドルを握って運転席に座っていた。
 落ち着きを取り戻すと、助手席においていた鞄から携帯電話を取り出し、リチャードに電話をかける。
 コールに関しての情報はないか確認するためだった。
 特に変わったことはないとリチャードの口から直接聞くが、全く新たな動きがないのも不気味でならない。
 そして見間違えたものが頭から離れず、リチャードにも一応報告した。
「一瞬のことだったから、見間違えの線が強いんだけど、あまりにもコールの姿を思い出さされて少し怖かったわ」
「そっか、しかしなんかちょっと引っかかる。その隣に居た女だけど、ストレートロングの黒髪だったんだな。コールの恋人だったマーサと被るところがある」
「でも側にいたのはちょっと体を鍛えた高校生くらいにみえたわ。バックミラーを見たとき、赤毛の男が近くにいたのかもしれない。コールは機敏な動きで移動するから」
「もしその女がマーサだとしたら、動きを監視して近くにいたということも考えられる。場所はどの辺だ、一応調査しておこう」
 アメリアは場所を告げると電話を切った。

 腹が減ったとヴィンセントが台所に現れると、リチャードは背広に袖を通して出かけようとしていた。
「また事件か」
 ヴィンセントが聞く。
「ああ、コールがうろついてる情報が入った。調べてくる」
「俺も一緒に行くよ。家にいても気が滅入るだけだし、いざというときには力にもなる。気晴らしに暴れてもみたい」
「遊びじゃないんだぞ」
 リチャードは警告するが、ヴィンセントはちゃっかりとついていった。
 アメリアが目撃したという場所に車を止め、二人は手分けして辺りを調査し始めた。
 ヴィンセントが住宅街を歩き回っていると、暫くして、後ろから声を掛けられた。ポールだった。だがそれは外面だけで内面はコール。まさにこの時探していた人物だったが、ヴィンセントはまだ気がつかない。
「よお、こんなとこで、何、歩き回ってるんだ」
「なんだ、ポールか。ちょっと人探しだ。この辺りで赤毛の怪しげな男は見なかったか」
「は? なんだそれ。そんなの見たことないけど、なんでそんな男この辺りで探してるんだ?」
 場所を特定されたことに多少驚いたが、本人を目の前にばれてないことがおかしく笑いそうになるのをコールは堪えていた。
「ちょっとな」
「ふーん、どうでもいいけどね。それより、お前ベアトリスになんかしたのか。アイツ益々おかしくなってきたぞ。自殺しないように見張っとけよ」
「自殺? どういうことだ」
「お前、気がつかないのか。彼女、かなり精神をやられている。何かに直面して、それから逃げようとしている感じだ。あれ以上問題を抱え込んでしまったら、 彼女はつぶれるかもしれない。原因はお前じゃないのか。お前に冷たくされて、ショックとか、それとも他に抱えている問題があるのかもしれないが」
 意味ありげにコールは言った。
 もし自分が原因だったとしたら──。ヴィンセントが思い当たるのは真実を受け入れようとしていたベアトリスを否定してしまったことだった。
 ヴィンセントはいたたまれなくなって、顔を背けて歯を食いしばっていた。
「そんなに辛いんだったら、ベアトリスの側にいてやればいいじゃないか(できればだがな)」
 コールは鼻で笑っていた。
 そのとき、後方からリチャードが近づく。コールは一瞬ひやりとしたが、リチャードも気がつかないことに気を取り直し小馬鹿にした目つきで言った。
「あんた誰?」
「ヴィンセントの父親です。君はヴィンセントの友達かい?」
「まあ、そういうところかな。同じクラスをいくつか取ってるだけだが。それじゃ俺、帰るな。ヴィンセントまたな」
 コールはリチャードも欺き笑いを堪えて、少し肩を震わせていた。
 リチャードを尻目に得意げに去っていった。
 その後姿をリチャードは鋭い目で見ていた。
 アメリアが言っていた体を少し鍛えた高校生の表現と一致するだけに、怪しく感じていた。
「今の子はフットボールの選手でもしてるのか。かなり体を鍛えてそうだが」
「あいつはこの間まで脂肪の塊だったんだが、ここ最近急激に痩せやがった。以前も話したけど、俺に絡んで来た奴ってあいつなんだ。体も痩せて中身も別人みたいになっちまいやがった」
「別人?」
 リチャードは何か引っかかったが、ダークライトの気は一切感じなかったと暫く後姿を見ていた。もう少し調べた方がいいかと思ったとき、ヴィンセントが話の腰を折った。
「なあ、親父。ダークライトの気も感じないし、やっぱりアメリアの見間違いだったんだよ。それより俺、腹減った。飯食いに連れてってくれ」
「仕方ないな」
 リチャードはすっきりしないまま、その場を離れた。
 その後二人はレストランへ向かう。そこでヴィンセントは自棄食いした。未成年なので酒が飲めないが、お変わり自由なストロベリーレモネードを何杯も飲んでいた。
 リチャードはまだまだ子供だと呆れてみている。しかしベアトリスのことで悩み、問題を抱えている息子が不憫でならなかった。
 ヴィンセントは黙々と食べる。プロムが最後のチャンスだとばかり、ベアトリスと二人っきりになることだけを考えていた。