「ここにいる人達、皆、素敵だね!!」
「だろ!?俺の自慢の仲間達なんだ!!」
「そっか!!あ・・・そういえば・・・」
「ん?」
「ここでは、皆、何をしてるの?」
「あ~、ここは、ボディーガード屋だよ」
「ボディーガード屋?」
「そう、依頼人からお金をもらって守る仕事だよ」
「へ~!!そうなんだ~!!カッコ良い~!!!あ~、あと、何で
〝MaGistic Security Guard〟って名前なの?」
「あ~、〝MaGistic〟ってのは、〝魔法〟を意味する〝Magic〟と
〝威厳〟あるいは〝堂々とした〟って意味のある〝Majestic〟を
掛け合わせた造語だよ。俺達は、魔法で戦って守るし、威厳がないといけないから。〝G〟が大文字なのは、インパクトが欲しかったからってだけなんだけど」
「へ~!!ますますカッコ良い!!!」
「そうかな?そう言われるとテレるよ」
「うん!!凄くカッコ良いよ!!!」
「あ~、そうだ、まだこの世界の事を良く知らないなら、俺が色んなところへ連れていってあげるよ!!」
「ホント!?やった~!!わ~い!!ワクワクするな~!!」
「それと、今日から、元の世界に帰るまでの間、この店の俺の部屋で一緒に生活しなよ!!」
「え!?良いの!?ありがとう!!!」
ミリカは、その日の翌日からゼドルと共に色んなところへ行く事になった。
ワクワクしているゼドルは、風のように走る。
「お~い!ミリカ~!こっちこっち~!!」
「待ってよ~!!」
「ここだ」
「わ~!すご~い!!」
そこは、たくさんの動物達がいる草原だった。
「キレイ~!!それに、たくさんの動物達がいる!!」
「だろ?!」
「うん!!ア、アレ?」
「ん?どうした?」
〝チュンチュン〟
「何か、スズメ達が話してる」
「え!?ホントか!?」
耳を澄ませて聞いてみた。
「ねぇ、ここにまた人間が来たよ。何でここは、こんなに人が来るのかな?」
「さぁ?どうでも良いよ。知ったところで何にもならないし」
「ホントだ!ホントに喋ってる!! 」
「本当か!?なんて言ってるんだ!?」
「何か、〝また人間が来たよ。ここは、何でこんなに人間が来るのかな?〟〝さぁ?どうでも良いよ〟だって」
この時、ミリカは、動物の言葉が解る事に、自分でも驚いていた。
「そっか~!!」
「でも、ゼドル、ここって人が良く来るの?」
「うん。キレイだし、可愛い動物がいっぱいいて、キレイな花や
植物もいっぱいあるからね。写真家とか、動物好きとか、植物好きとか、色んな人が来るんだ」
「そっか~!!確かに、キレイだし、可愛い動物、いっぱいいるし、空気もとっても美味しいしね!!」
「うん!!でも、それより、動物の言葉が解る人なんて、本当にいたんだ!!」
「え?この世界には、当たり前のように魔法があるのに、他に、
〝動物の言葉が解る〟って能力を持った人、他にはいないの?」
「うん。何か、本には書いてあったんだけど、本当かどうかまでは
解らなかったんだ。まぁ、言い伝えだね」
「へ~!!じゃあ、私って、特別なんだ!!」
「うん!!でも、君、動物の言葉を聞いたのは、初めて?」
「うん!!でも、何か、何となく、昔から、動物の様子を見ると、
その時その時の細かい仕草や様子で、〝どんな気持ちなのか〟とか〝何を考えているのか〟とかは、何となく解るような気はしてたんだけど、それって、普通とはちょっと違うのかな?」
「う~ん・・・良く解らないけど、とにかく、君は凄い人だ!!」
「そうかな!?ありがとう!!」
「うん!!」
それから、ミリカとゼドルは、色んなところへ一緒に行った。
ある時は、ガードマンの仲間達も一緒に祭りに行ったりもした。
〝ヒュ~ン〟〝バン〟
花火が打ちあがる。
ゼドル以外のガードマン達は皆、食べ物を買ったり、遊んだりなどしている。
「わ~!!キレ~イ!!」
「だろ!?ミリカも、花火、好きかい?」
「うん!!キレイだから!!私の世界でも、毎年、夏祭りで良くやってて、私、いつも、浴衣を着て夏祭りに行ったりしてたの!!」
「〝浴衣〟?」
「あ~・・・ここはヨーロッパみたいな国だから、そういうのはないか・・・」
「ヨーロッパ?」
「うん!!〝ヨーロッパ〟っていうのは、私がいた世界にあって、〝イギリス〟とか〝フランス〟とか〝イタリア〟とか色んな国があるんだけど、〝ヨーロッパ〟は、この国に良く似てるの!!で、私は、〝アジア〟の〝日本〟に住んでたの。でも、私は、お父さんが日本人で、お母さんがイギリス人のハーフなの」
「へ~!!そっちの世界にも、たくさんの国があるんだね!!」
「うん!!」
〝ヒュ~ン〟〝バン〟
周りには、犬、猫、ハトなどの動物達がいる。
「アレ?皆、何か言ってる!!」
「本当か!!また動物達は喋ってるのか!!」
「うん。え~っとね」
その日も、ミリカは、動物の言葉を聞いて、なんと言っているのかをゼドルに教えていた。
しばらくして、花火も祭りも終わった。
それからも、ゼドルと共に色んなところへ行く度に、ミリカは、
色んな動物の言葉を聞き取った。たくさん人が通るところでも
動物達がなんと言っているかをゼドルに教えていたため、
周りの色んな人達が影からそれを見る事で、
「ミリカが動物の言葉が解る」という事が噂になり、時には、
「この動物、なんて言ってるんですか?」などという質問をされる事もあった。
だが、ミリカの能力の事が色んなところで話題になると、影で悪巧みをする人間達が「アイツは色んな事に使えて金儲けができるんじゃないか?」などと言っていた。
その日の夜、ミリカは、
(そういえば、今頃、現実の皆はどうしてるんだろう?)7と考えながら寝た。
数週間後、ミリカは、いつものように「MaGistic Security Guard」のメンバー達といた。だが、そこへ、銃を持った男達が何十人もやって来た。
〝バン〟
「何だ?」
「おい!ここに、動物の言葉が解る娘がいるだろ?」
「何でそれを!?それに、何でここが分かった?」
「その娘の事は有名だよ。何でここが分かったかなんて簡単だ。
その娘は、大体、ここのリーダーであるお前と一緒にいるんだからな」
「くっ!!この娘に何の用がある!?」
「ソイツのその能力を使えば、良い金儲けになると思ってな~!!だから、さぁ、大人しくソイツを渡せ。そうすりゃ、何もしねぇでやる」
「この娘は、道具じゃない!!」
〝バン〟
「クソッ!!仕方ない!!皆、戦うぞ!!」
「了解!!」
ギーゼフ以外のメンバー達は、ガムを噛んだ。
「えっ!!こんな状況でガム!?」
「あ~、そうしないと、戦えないんだよ」
「えっ!?どういう事!?」
「詳しい話は後だ!!」
皆、ガムを膨らまし、そして、弾け、消えた。
「あっ!!コレ、あの時も同じだった!!」
その時、ミリカは、ゼドルと出会った時の事を思い出していた。
「おい!!大人しくしてるヒマなんかねぇぞ!!俺達は、のんびり待ってやるほど気が長くねぇんだ!!」
〝バンバン〟
「ンなこたぁ、言われなくても分かってるよ!!」
ゼドルは、銃弾を止め、ひっくり返らせて飛ばした。
〝バババババン〟
〝グシュアッ〟
銃弾は、男達の手や腹などに当たり、男達はケガをした。
「うわ~~~っ!!!」
ミリカは、
(コレは、あの時と同じ魔法だ!!)と思った。
「仕方ない。今は、手加減してる余裕なんてない。お前ら、あとは
何とかしといてくれ!!俺は、ミリカを連れて逃げる!!」
「了解!!」
ゼドルは、ミリカの手を引っ張って走った。
大変な状況だったが、ミリカは、ゼドルにまた手を握られ、守られながら、ドキドキしていた。
敵は、思ったより大勢いて、走った先にも何人も待ち構えていた。
「クソ~!!コイツら、一体何なんだよ~!!」
ゼドルは、一旦ミリカから手を離し、迫り来る敵を剣でひたすら斬りまくった。
〝ザンッ〟〝シュッ〟〝ズシャッ〟
(わ~!やっぱり、カッコ良い~!!)と思った。再びゼドルに引っ張られて走り、少し前、ゼドルと一緒に行った図書館に入った。
〝バタン〟
「ハァハァ・・・・・・ここまでは、さすがに追って来ないだろ」
「え?何で?」
「この図書館には、色々と大切に管理されてる、とても貴重な本が多いからね。中も外も、警備が厳重なんだよ」
「あ!確かに、そう言われてみれば、この前もさっきも、ここでいっぱい警備員さんを見た!!」
「だろ?だから、ここなら大丈夫さ」
「そっか!!」
「でもさ、ゼドルの仲間の人達、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ!!俺の仲間達は、皆、強い!!超優秀な仲間達さ!!あんなヤツらにやられはしない!!」
「そっか!!あの人達も、カッコ良かったな~!!」
「ん?」
ミリカは顔を赤くした。
「あ!あ~!!実は、前から、ゼドルが戦ってるところを見ると、
とっても勇気があるし、カッコ良いな!!って思ってたの・・・・・・でも、さっき、ゼドルの仲間のあの人達が戦ってるところを見て、
あの人達も、凄くカッコ良いって思った!!」
すると、ゼドルも顔を赤くした。
「え!?ホントに!?ありがとう・・・・・・」
ミリカは、その時、そんなゼドルを見て、普段はカッコ良いゼドルも、テレると可愛い一面があるんだと思った。
「でも、俺の仲間達も、頼もしいだろ!?」
「うん!!あ・・・!そういえば、さっき、大変な状況だったのに、ガムを噛んでたけど、何で?」
「あ・・・あ~。アレは、魔法使いが魔法を使う時に必要なのさ。
魔力が入ったガム。アレを噛む事で、身体に魔力を取り入れる事が
出来るんだよ。1枚噛めば、1時間魔法が使える」
「そうなんだ!!あ!それと、何で、あのガムは、突然消えたの!?」
「あ~、あのガムは風船ガムなんだけど、ちょっと特殊でね。普通、ガムは、噛んだ後、袋に包んで捨てるモンだけど、魔法を使って戦う時、そばにゴミ箱なんてない事が多いし、捨ててるヒマもないから、捨てなくて済むように、膨らませて弾けると、その弾けた瞬間に消えるように作られてるのさ」
「へ~!そうなんだ!!凄いね!!便利!!」
「だろ~!?まぁ、ガムを噛んだ後、ゴミ箱がそばにないからといって、ポイ捨てするワケにはいかないし、かといって、ポケットに入れるのも汚いからね」
「なるほど!凄い!!ガムで魔法が使えて、しかも、膨らませて弾けた瞬間消えるなんてオシャレ!!私が好きなどのファンタジーにも、そんなの全然なかった!!」
「ファンタジー・・・・・・?何それ?」
「あ~、私達の世界の文化。〝ファンタジー〟っていうのは、
〝夢のような物語〟の事。私達の世界では、魔法は使えないんだけど、私達の世界にある〝ファンタジー〟ってジャンルの物語には、魔法を使える人が出てくるの。ファンタジーの世界でも、魔法にも
欠点や使うための条件や制限があって、作品によって、皆、魔法を使うための条件は違うんだけど、〝ガムを噛んで魔法を使う〟なんて、見た事ないし、弾けて消えた時、凄くビックリした!!」
「あ~、そうなのか」
「うん!!まぁ、私が今まで見てきたのは、全部作り話だったんだけどね」
「そっか!そうやって、君はずっと、魔法に憧れてきたから、
初めて会った時も、魔法を見て嬉しそうにあんな事を言ってたのか!!」
「あ・・・あ~・・・・・・」
その時、ミリカは、異世界へやって来て、初めてゼドルに会った時の、自分の「私の幻想はホントにあったんだ!!」という発言の事
を思い出した。
「あの言葉、聞こえちゃってたのか・・・恥ずかしい・・・・・・」
「なぁ、ミリカ、今まで、その〝作り話〟の中でしか見なかった魔法を、実際に目の前で見てどうだった?」
「え!?そりゃ~、凄かったし、迫力あったし、感動したよ!!テロリストに人が襲われたり、私も、色んな人に狙われたり、大変だったけど」
「そうか・・・・・・でも、魔法がある事は、良い事ばっかりじゃないんだけどね」
「え!?そうなの!?何で!?」
「そのうち分かるさ」
「そっか・・・・・・」
「それと、ミリカ、今日、ミリカを自分の都合の良いように使おうと考えてるヤツらに狙われて大変だったけど、おそらく、今日、襲いかかって来たヤツらは、まだ、懲りないだろうし、今日のヤツら以外にも、まだまだ襲ってくるヤツがいるかもしれないよ」
「え!?私、まだ襲われるの!?それに、他にもまだまだ襲ってくる人達がいるかもしれないって!?」
「うん。分からないけど。自分の利益のために他人を襲うような悪いヤツらは、そう簡単には懲りないし、ミリカが動物の言葉を理解する力を持ってるのは、もう、かなり有名みたいだからね」
「そんな・・・・・・?」
ミリカは、泣いた。