彼女の裸体は透き通るように美しく、その肌に引き込まれような感覚に襲われる。
例え同性であろうとも、湧き上がるこの欲情を抑えることは、苦しみにさえも感じた。
さっき出会ったばかりのこの子に。
私は異常者なのか?
まだ私の半分くらいの年の子に、熱く感じるこの躰がこの子を求めている。
「どうかなさりましたか?」
今まで、少し半開きのようなうつむき加減の瞳が、大きく見開きこの私を見つめている。
「あ、ううん。な、何でもないの」
そう言いながらも私の心臓の鼓動は、少しづつ高鳴り始めている。
私は同性愛者だったんだろうか?
それともこれはもう、何もない自分が生み出した新たな自分自身の想いなのか?
バスローブ一枚、羽織っただけのこの姿。それに質素な下着を身に着けたこのシスター、カオリ・ラヴィナーレの身体から感じる、彼女の歳にあわないエロスのオーラが、私をいけない行動に導こうとしている。
「スレイユさん。あなたは私が救いの手を差し伸べるかのような期待をお持ちの様ですけど、実際私はあなたを救うことは出来ません。いいえ、助けようなんてこれっぽっちも思っていません。だって私は、あなたを助けるためにここに、あなたに会いにきたんじゃないんですから」
その言葉を彼女から聞いて少し胸に刺さった。
言葉というものは恐ろしいものだ。
今までの彼女の話から、私は神の使いが手を差し伸べてくれたんだと……そう感じていた。しかし今彼女はきっぱりと言った。
私を助けるために来たんじゃないと。
私の未来の姿を、この子はずっと前から知っていたと言った。
それならこうなることが分かるのなら、これからどうなるか? その未来も見えているんだろう。
だとするならば、私の進むべく道を彼女は知っていることになるんだろう。
そう私は考えていた。
だから彼女は私のこのボロボロになった運命を、変えてくれる力を持っていると信じていたのに。
そんなに甘くはないか……現実は。
「そうだよね。そんなうまい話があるわけがないよね」
クリっとした目をしながら彼女はにっこりとほほ笑んで
「そうですよ。そんな都合のいいようなことってないんですよ」
まったく、この子は恐れを知らないんだろうか? 私がどんなに苦しんで、さっきまでいたのか。その悲しみと失望感を彼女は何も知らないのに、それなのに、微笑んで返す言葉は一言一言が私の心に少しづつ刺さる。
「はぁ、」と。ため息をつきながら彼女の隣に腰を落とした。
そんな私を見て
スレイユさんの身体綺麗ですね。
はだけたバスローブから私の裸がさらけ出されていた。
トリガーを引いたのはどっちだ?
私か?
それともこの子か?
無意識だった。躰が勝手に動いていた。
カオリ・ラヴィナーレの躰を引き寄せ、私は彼女の唇に自分の唇を重ね合わせていた。
ゆっくりと、そして熱く、息が少しづつ上がっていく。
カオリ・ラヴィナーレは嫌がるそぶり一つあらわさない。それどころか私の唇を強く重ね合わせながら、彼女の熱い舌が割り込んでくる。
この子、キス上手。
和樹とのキスとは比べ物にならい程、溶けていきそうになる。
温かい。肌の温もりが躰全身に伝わるようだ。
長いキスの後、彼女の瞳をずっと見つめていた。そんな自分がとても恥ずかしくなって一言「ごめん」と、言ってしまった。
「別に構いませんわよ」
ちょっとうつむきになりながら、カオリ・ラヴィナーレは言う。
「私はいけない聖職者なんです」
「それってどういうこと?」
「……そ、そう言う事。なんです。初めてじゃないんです私」
初めてじゃないって……
まぁ今どきのこのくらいの年の子だったら、それなりの経験がある子は多いだろうけど、彼女は仮にもシスターの姿をしているし、自分でも主の使いだと言っていた。その聖職者。でも、何か事情があるのかもしれない。
「い、今どきのシスターも恋愛位するかもしれないわよね」
苦し紛れに出たような言葉に
「恋愛? そんなんじゃないんですけどね」
ちょっと悲しげな声が返ってくる。
そんな彼女の姿を見て、いとおしさを強く感じてしまう自分が今ここに居る。
彼女の耳元にやさしく息をかけるように囁いた。
「今日は時間……大丈夫なの?」
小さく頷く彼女の躰を私は抱きしめた。
抱きしめると心が和らぐ。暖かい気持ちになれる。さっきまで冷たく何も感じ無かったあの心は温かさを感じていた。
私は何か忘れかけていたものを、今思い出したような気がする。
人の心の温かさ。人の身体のぬくもり。
ずっと前に、どこかにおいて忘れてきてしまった想い。
この子は、それを私に思い出させてくれた。
それからもう、言葉なんかいらなかった。
いけないことをしている。それは分かっている。
この子はまだ未成年だ。しかもシスターという聖職者であるのに。
私たちは、お互いの肌を重ね、触れ合い、目の前にいるその人の心を求めあった。
和樹とはもう数えきれないほど肌を重ね合わせた。
でも、彼との恋は何か冷たさをいつも感じていた。
満ち足りない想い。どこか寂しさだけがいつも最後に私を襲う恋。
カオリ・ラヴィナーレの鼓動は、私のこの満たされない心を溶かしてくれるような温かさを伝えてくれた。
今まで私は何かを犠牲にしていた。
その何かは今までわからなかった。
でも、彼女のその体に触れるたびに想いは蘇《よみが》る。
私たち二人はお互いの躰すべてを、残すところなく触れ合った。
全部を、すべてを二人は共に受け入れた。
言いようもない高揚感が私たちを包み込み、お互いの躰と心を激しくかよわせた。
初めてだ。
これほど愛しさを感じ、一人の人を思えるこの感じを得たのは。
二人の瞳が合わさるように見つめあい、高鳴る鼓動が静かに落ち着くのを感じながら、私たちは抱き合う。
「いけない子ね」
「そうですか? でも、素直な私の気持ちがこうなっただけですよ」
「素直な気持ちか……。それを言うなら私はあなたに諭《さと》されたのかもしれないなぁ」
「うふふ、私は司祭様じゃありませんわよ」
「そうだけど」ちょっとむくれてみた。
「スレイユさん、可愛いい」
「ちょっと大人をからかわないの!」
毛布に潜り込む彼女を追うように私も毛布の中に潜った。
長いつややかな髪が私の顔を覆いつくす。柔らかい甘い香りが鼻をすすった。
「ねぇ、今日泊っていきなさいよ。いいでしょ」
彼女の髪をなでながら、毛布の中で囁《ささや》く。
なでるその頭がこくりとうなずく。
「うれしい。もう一人でいることに私耐えられないの」
カオリ・ラヴィナーレのその幼い体を抱きしめた。
お互いの体液でべとべとになったその体で。
「私たちの躰べとべとだね」
「べとべと」
「お風呂はいろっか」
「うん」
素直な言葉が返ると、可愛さが倍増してくる。
バスタブの中で。
「おなかすいたね。何かケイタリング頼もうよ。カオリは何が食べたい?」
「ピッツアが食べたい」
「ピッツアかぁ、いいねぇ。後一緒にフライドチキンも注文する?」
「フライドチキン? 食べたいけど太るかなぁ」
「大丈夫また運動すればカロリーは消費されます。食べたら今夜は寝かせないぞぅ!」
「スレイユのエッチ!」
ぶぅと、ほほを膨らませて怒った顔がまた可愛い。
もう最初に出会った時の、あの清楚なシスターの面影はなくなっていた。これが彼女、カオリ・ラヴィナーレの素顔。そして本当の心の姿だと思った。
この子といれば、怖さなんか忘れられる。
私は一人なんかじゃない。その安心感が私を迷走の世界へと引き寄せていった。
そしてカオリは呟いた。
「でも、ここにはケイタリングは届かない」
「どうして?」
「だって……、もうこの部屋は存在しないんだもの」
「……え」
例え同性であろうとも、湧き上がるこの欲情を抑えることは、苦しみにさえも感じた。
さっき出会ったばかりのこの子に。
私は異常者なのか?
まだ私の半分くらいの年の子に、熱く感じるこの躰がこの子を求めている。
「どうかなさりましたか?」
今まで、少し半開きのようなうつむき加減の瞳が、大きく見開きこの私を見つめている。
「あ、ううん。な、何でもないの」
そう言いながらも私の心臓の鼓動は、少しづつ高鳴り始めている。
私は同性愛者だったんだろうか?
それともこれはもう、何もない自分が生み出した新たな自分自身の想いなのか?
バスローブ一枚、羽織っただけのこの姿。それに質素な下着を身に着けたこのシスター、カオリ・ラヴィナーレの身体から感じる、彼女の歳にあわないエロスのオーラが、私をいけない行動に導こうとしている。
「スレイユさん。あなたは私が救いの手を差し伸べるかのような期待をお持ちの様ですけど、実際私はあなたを救うことは出来ません。いいえ、助けようなんてこれっぽっちも思っていません。だって私は、あなたを助けるためにここに、あなたに会いにきたんじゃないんですから」
その言葉を彼女から聞いて少し胸に刺さった。
言葉というものは恐ろしいものだ。
今までの彼女の話から、私は神の使いが手を差し伸べてくれたんだと……そう感じていた。しかし今彼女はきっぱりと言った。
私を助けるために来たんじゃないと。
私の未来の姿を、この子はずっと前から知っていたと言った。
それならこうなることが分かるのなら、これからどうなるか? その未来も見えているんだろう。
だとするならば、私の進むべく道を彼女は知っていることになるんだろう。
そう私は考えていた。
だから彼女は私のこのボロボロになった運命を、変えてくれる力を持っていると信じていたのに。
そんなに甘くはないか……現実は。
「そうだよね。そんなうまい話があるわけがないよね」
クリっとした目をしながら彼女はにっこりとほほ笑んで
「そうですよ。そんな都合のいいようなことってないんですよ」
まったく、この子は恐れを知らないんだろうか? 私がどんなに苦しんで、さっきまでいたのか。その悲しみと失望感を彼女は何も知らないのに、それなのに、微笑んで返す言葉は一言一言が私の心に少しづつ刺さる。
「はぁ、」と。ため息をつきながら彼女の隣に腰を落とした。
そんな私を見て
スレイユさんの身体綺麗ですね。
はだけたバスローブから私の裸がさらけ出されていた。
トリガーを引いたのはどっちだ?
私か?
それともこの子か?
無意識だった。躰が勝手に動いていた。
カオリ・ラヴィナーレの躰を引き寄せ、私は彼女の唇に自分の唇を重ね合わせていた。
ゆっくりと、そして熱く、息が少しづつ上がっていく。
カオリ・ラヴィナーレは嫌がるそぶり一つあらわさない。それどころか私の唇を強く重ね合わせながら、彼女の熱い舌が割り込んでくる。
この子、キス上手。
和樹とのキスとは比べ物にならい程、溶けていきそうになる。
温かい。肌の温もりが躰全身に伝わるようだ。
長いキスの後、彼女の瞳をずっと見つめていた。そんな自分がとても恥ずかしくなって一言「ごめん」と、言ってしまった。
「別に構いませんわよ」
ちょっとうつむきになりながら、カオリ・ラヴィナーレは言う。
「私はいけない聖職者なんです」
「それってどういうこと?」
「……そ、そう言う事。なんです。初めてじゃないんです私」
初めてじゃないって……
まぁ今どきのこのくらいの年の子だったら、それなりの経験がある子は多いだろうけど、彼女は仮にもシスターの姿をしているし、自分でも主の使いだと言っていた。その聖職者。でも、何か事情があるのかもしれない。
「い、今どきのシスターも恋愛位するかもしれないわよね」
苦し紛れに出たような言葉に
「恋愛? そんなんじゃないんですけどね」
ちょっと悲しげな声が返ってくる。
そんな彼女の姿を見て、いとおしさを強く感じてしまう自分が今ここに居る。
彼女の耳元にやさしく息をかけるように囁いた。
「今日は時間……大丈夫なの?」
小さく頷く彼女の躰を私は抱きしめた。
抱きしめると心が和らぐ。暖かい気持ちになれる。さっきまで冷たく何も感じ無かったあの心は温かさを感じていた。
私は何か忘れかけていたものを、今思い出したような気がする。
人の心の温かさ。人の身体のぬくもり。
ずっと前に、どこかにおいて忘れてきてしまった想い。
この子は、それを私に思い出させてくれた。
それからもう、言葉なんかいらなかった。
いけないことをしている。それは分かっている。
この子はまだ未成年だ。しかもシスターという聖職者であるのに。
私たちは、お互いの肌を重ね、触れ合い、目の前にいるその人の心を求めあった。
和樹とはもう数えきれないほど肌を重ね合わせた。
でも、彼との恋は何か冷たさをいつも感じていた。
満ち足りない想い。どこか寂しさだけがいつも最後に私を襲う恋。
カオリ・ラヴィナーレの鼓動は、私のこの満たされない心を溶かしてくれるような温かさを伝えてくれた。
今まで私は何かを犠牲にしていた。
その何かは今までわからなかった。
でも、彼女のその体に触れるたびに想いは蘇《よみが》る。
私たち二人はお互いの躰すべてを、残すところなく触れ合った。
全部を、すべてを二人は共に受け入れた。
言いようもない高揚感が私たちを包み込み、お互いの躰と心を激しくかよわせた。
初めてだ。
これほど愛しさを感じ、一人の人を思えるこの感じを得たのは。
二人の瞳が合わさるように見つめあい、高鳴る鼓動が静かに落ち着くのを感じながら、私たちは抱き合う。
「いけない子ね」
「そうですか? でも、素直な私の気持ちがこうなっただけですよ」
「素直な気持ちか……。それを言うなら私はあなたに諭《さと》されたのかもしれないなぁ」
「うふふ、私は司祭様じゃありませんわよ」
「そうだけど」ちょっとむくれてみた。
「スレイユさん、可愛いい」
「ちょっと大人をからかわないの!」
毛布に潜り込む彼女を追うように私も毛布の中に潜った。
長いつややかな髪が私の顔を覆いつくす。柔らかい甘い香りが鼻をすすった。
「ねぇ、今日泊っていきなさいよ。いいでしょ」
彼女の髪をなでながら、毛布の中で囁《ささや》く。
なでるその頭がこくりとうなずく。
「うれしい。もう一人でいることに私耐えられないの」
カオリ・ラヴィナーレのその幼い体を抱きしめた。
お互いの体液でべとべとになったその体で。
「私たちの躰べとべとだね」
「べとべと」
「お風呂はいろっか」
「うん」
素直な言葉が返ると、可愛さが倍増してくる。
バスタブの中で。
「おなかすいたね。何かケイタリング頼もうよ。カオリは何が食べたい?」
「ピッツアが食べたい」
「ピッツアかぁ、いいねぇ。後一緒にフライドチキンも注文する?」
「フライドチキン? 食べたいけど太るかなぁ」
「大丈夫また運動すればカロリーは消費されます。食べたら今夜は寝かせないぞぅ!」
「スレイユのエッチ!」
ぶぅと、ほほを膨らませて怒った顔がまた可愛い。
もう最初に出会った時の、あの清楚なシスターの面影はなくなっていた。これが彼女、カオリ・ラヴィナーレの素顔。そして本当の心の姿だと思った。
この子といれば、怖さなんか忘れられる。
私は一人なんかじゃない。その安心感が私を迷走の世界へと引き寄せていった。
そしてカオリは呟いた。
「でも、ここにはケイタリングは届かない」
「どうして?」
「だって……、もうこの部屋は存在しないんだもの」
「……え」