彼女の口から私の名前が出たことにより、クラス中の視線が私に向けられる。誰も伊藤くんを見ようとしないのは、彼に余計な刺激を与えたくないからだろう。

『こいつと転校生なんかで大丈夫なのかよ』
『山下さんはともかく伊藤くんはちょっとなあ』
『ぶっちゃけ山下でも誰でもいいからやってくれよ。面倒だし』

そんなクラスメイトたちの心の声が垣間見え、心底嫌な気分にさせられる。誰も口にしないけれど、私にはしっかりと見えているのだから。
新しい委員を決めるときはいつもこうだ。みんな好き勝手に人に押し付けて、自分ではやろうとしない。
先生でさえ『毎年面倒なんだよなぁ。早く決めてくれ』なんて考えている始末。ホームルームの進行を櫻井さんに丸投げしているあたりからもやる気のなさが伺える。