今日は早く帰ろうと思っていたのに。すぐに流されてしまう自分の性格が憎い。

『山下さんかわいそう……押し付けられてる』

身支度をしていたクラスメイトたちはそんな哀れみの目で私を見ている。同情するなら代わってくれればいいのに。
ここに櫻井さんがいなくてよかった。いたらきっと面倒なことになっていたに違いない。彼女のことだから「私も手伝う」とか「押し付けちゃいけないでしょ」なんて理由をつけて割り込んでくるに決まっている。
そのあと、私と仲良くなるためにあの手この手を使って近づいてくるところまでがお約束だ。
私はわざとゆっくり戸締りを確認し、その間にクラスメイトたちが帰ってくれるのを待つことにした。
既に手遅れの気もするけど、これ以上注目を浴びたくはない。