私が場所を教えてあげるべきなのだろうか。暴言吐かれそうだから怖いけれど、教室にはもう私しかいないし、私が教えてあげなきゃ伊藤くんが困る結果になるのは目に見えている。
「あ、あの……」
私は席を離れ、意を決し伊藤くんに声をかけてみた。あくまで移動するついで、という体を装って。
「あ? なに? もう授業だろ。さっさと行けよ」
「えっと、あの」
うわぁ、やっぱり怖い。
でも、不思議だ。こんな酷い言い方をしているのに伊藤くんの心の中はちっとも酷くない。

『早く行かないと間に合わないんじゃ?』

それどころか、こうして私の心配までしてくれている。