時計を見ると、授業開始まであと三分もない。そろそろ私も行かなくちゃいけない。
だけど、うーん……。このまま行っちゃっていいのかな。
ぼうっと座っている伊藤くんの頭上をちらっと見る。

『どうしよう、教室の場所がわからない……』

そこには、焦っている伊藤くんの思考が浮かんでいた。
……本当に、なんなんだろうこの人。櫻井さんとやり取りしている時には既に『場所がわからない』って思っていたみたいだし、意地を張らずに素直に教えてもらっていればよかったのに。