始業式とホームルームを終えると、沈みかけていたクラスの雰囲気はもとに戻りつつあった。というのも、伊藤くんは誰にも話しかけることなくただ不機嫌そうなオーラを出すだけだったから、みんな彼をいないものとして扱っているようだった。
触らぬ神に祟りなしというやつだろうか。でも、ひとりだけ触りまくりそうな人を私は知っている。
「伊藤くん!」
今朝私に声をかけたのと同じトーンで、櫻井さんは伊藤くんに話しかけていた。
うん、この人ならやると思っていた。
案の定今学期もクラス委員に名乗りをあげた櫻井さん。伊藤くんに声をかけるならこの人しかいないだろう。