「えっ、そ、そんな」

 本心は喜んで受け入れたかった。

 だけど私の乙女心はまだ幼く恥ずかしさでいっぱいだった。

 舞い上がりながらも驚いている私に、リュウゴはくすっと笑った。

「でも僕は一応命の恩人ということ忘れないでね」

 念を押した言い方は、そこだけ押し付けがましく、また厚かましくも聞こえる。

 それは事実なのだから反論できない。

 だけどリュウゴのような人が自分の彼だったらと思ったら、私の方が浮かれてしまう。

「これで少しは僕のこと、君の心に刻まれたかな。だったら嬉しいな」

「私、その……」

 リュウゴのような人には私なんて釣り合わないのはわかっている。

 リュウゴは私よりも年上でしっかりとした貫禄があって、女性ならみんな恋に落ちそうなタイプ。

 理想がそのまま目の前にいる。

 そして私は運よくこの人に命を助けられた。

 まるで奇跡のようだ。

 それとも本当に運命だったのだろうか。

 どんどん私の感覚がおかしくなって、リュウゴに心奪われていく。

 リュウゴはどこまで本気で言っているのだろう。

 私がこの先自殺を考えないように気を紛らわせているのだろうか。

 全てが異常から始まった出会い。

 リュウゴはかっこよく、そして私の命を救った。

 突然現れた私の王子様。

 そんな気持ちが高まってくる。

 私の方がすでにリュウゴに惚れていた。

 恋って突然やってくるものなんだと思っているとき、リュウゴは伏し目がちにどこでもない空間を見つめた。

「ごめん、今言ったこと忘れて」

「えっ」

 パリンと何かが割れたように急に辺りの雰囲気が冷たくなって不安をそそった。

「僕は君と関わらないのがいいのかもしれない」

 リュウゴは突然私を拒否し出した。極端な天地の差にも違う対応。

 私はうろたえ、がっかりとした表情を向けていた。

 すでに心はリュウゴが入り込んでいる。

 今更なかったことになんてできそうもない。

「僕は人の弱みに付け込み、それがずるいと分かっているんだ。僕もまた寂しくて、心通わせられる人を探していたんだ。そこにたまたま君がいたから、つい馬鹿な事を口にしてしまった。今の君なら簡単に僕のこと好きになってもらえると思ったんだ」

 リュウゴの言う通りだ。

 会ったばかりなのに、私はすでにリュウゴが好きになっていた。

「あの、私、助けてもらったお礼がしたいです」

少しでもリュウゴと繋がっていたい気持ちから出た言葉だった。