「何がいいたいんだろう」

 リュウゴはおばあちゃんの見つめる先を見る。

 そこには私が座り、いっぱい写真が置かれているちゃぶ台があるだけだ。

「カラーって言ってるから、カラー写真がみたいのかな」

 リュウゴは首を傾げ、適当に一枚手にしておばあちゃんに見せてあげた。

 それは水着姿の若かりし頃のおばあちゃんの写真だった。

「これ、おばあちゃんがまだ若かったときの写真だよ。これが見たかったの」

 おばあちゃんは首を横に振る。

 リュウゴは私に助けを求めるような顔を向けた。

 だから私はおばあちゃんの側に近寄った。

 私が側に行くなり、おばあちゃんは益々何かを伝えようと口を動かす。

 力を振り絞り、すっかり干からびてしまった手を震えながら私に差し出した。

「お、え、かい、か、せ、て、から、あ」

 はっきりと言葉になってない。

 私は憐憫の念を抱き、なんとかおばあちゃんをなだめようとする。

「おばあちゃん、ごめんね」

 おばあちゃんの思うようにならない事が気の毒すぎて、私は謝ってしまった。

 おばあちゃんはそれを訊いて益々涙を流し、その後は嗚咽して苦しそうだった。

 そんな姿を見せられたらやっぱり私も苦しくなる。

 私もつい貰い泣きしてしまった。

 おばあちゃんを見ていると、私はどんなときも人には優しく接してあげなければと思ってならない。

 いつか消え行く命。

 人間の定め。

 それを目の当たりにしてしまうと、赤の他人であってもやはり胸が詰まってしまう。

 本当に赤の他人ですましていいものだろうか。

 私は考え直す。

 おばあちゃんは私にとったら赤の他人なんて言ったらいけない。

 若い頃のおばあちゃん。

 写真の中では美しく輝いている。

 なんだかぐっと来てしまい、私も一緒になっておばあちゃんの情に流されていく。

 リュウゴも同じように泣いていた。

 おばあちゃんとの別れが近いと確信したのだろう。

「少し思い出話をするね」

 リュウゴは昔を思い浮かべながら話し出した。

 それはおばあちゃんに聞かせているようでもあり、私に言ってるようでもあった。