リュウゴは腰を上げて、おばあちゃんの側に寄った。

「おばあちゃん、どうしたの? 何かほしいの?」

 甘く優しい声。おばあちゃんですらとろんとした様子でリュウゴを見つめていた。

 自分で起き上がることもできず、ただリュウゴに甘えている。

 まるでリュウゴを恋人と思っているようだ。

 少しだけ妬けてしまう。

 だけど仕方がないと私はこの時、おばあちゃんにリュウゴを譲った。

 それが礼儀でもあるように思えた。

「ああ、ああ」

急に興奮した声が聞こえたかと思うと、おばあちゃんは私を見ていた。

「お邪魔してます」

 軽く頭を下げ殊勝な態度を示す。

 おばあちゃんは私を見るなり涙を流し始める。

 何かを話そうとするけど、上手く言葉が口からでないでいる様子が哀れで、私は目を逸らしたくなった。

 でもそうするのも失礼で、私もどうしていいのかわからなくなってしまう。

「昨日、興奮して暴れたから、少し強い薬を飲ませてるんだ。その副作用で思うように話せなくて、少し朦朧とするみたい」

 リュウゴはおばあちゃんの頭を優しく撫ぜながら教えてくれた。

「そういえば愛美里は顔や手に怪我をしてた」

「おばあちゃん、愛美里が近づいたら手を掴んでずっと離さなかったみたい。それでもみ合ってベッドから落ちて、その時手当たり次第に愛美里を傷つけてしまったんだろうね」

 愛美里も老婆から突然手を掴まれて襲われたら、たまったもんじゃなかっただろう。

 おばあちゃんは何かを必死に伝えようと口をパクパクしている。

 リュウゴは耳を近づけその言葉を聞こうとしていた。

「えっ、何? お願い? 貸して? カラー?」

 おばあちゃんの伝えようとしている言葉をリュウゴは必死に拾うも、その言葉は意味を成してなかった。