リュウゴの家についたとき、私は懐かしいと思ってしまった。

 畏まってドアベルを押せば、インターフォンからリュウゴの声が聞こえた。

 自分の名前を告げると、リュウゴはすぐに玄関の引き戸を開けて迎えてくれた。

「いらっしゃい」

 リュウゴに改まって歓迎されるとなんだか照れてしまう。

 だから私も「お邪魔します」と借りてきた猫のようになりながら、礼儀正しくする。

 それがおかしくてふたりで笑ってしまった。

「おばあちゃんの調子はどう?」

 玄関で靴を脱ぎながら、私は様子を伺う。

「僕の前では立場を弁えて、優しく接してくれるんだけど、時々不安になるのか泣きじゃくるときがある。昨日愛美里が来てそれがもっとおかしくなった感じだ」

「一体何があったの?」

「そっちこそ、愛美里に訊いたんだろ。彼女は何か言ってた?」

 リュウゴは心配そうな瞳を向けた。

「愛美里は昨日のことなかったことのようにしたいみたい。私が問いかけても詳しい事は話してくれなかった。だけどもう近づかないって、なんだか懲りたみたいな様子だった。おばあちゃんの方は大丈夫? 怪我とかしてない?」

「愛美里を見てとても驚いていたのは確かだと思う。彼女はいきなり押しかけてきたし、まさか麻弥と同じクラスの生徒がやってくるなんて思わなかったから、ちょっと興奮したみたい。この家には普段誰も訪ねて来ないからね」

「そっか、おばあちゃん余程びっくりしたんだろうね」

 私はその時の事を想像してみる。

 どんな風に愛美里を見ていたのか。

 なぜ愛美里を引掻いて傷つけてしまったのか。

 愛美里を恐怖に陥れるほどのおばあちゃんの行動。

 おばあちゃんは気が動転して感情が先走ってしまったに違いない。

 私はおばあちゃんの気持ちがわかるような気がした。