「わかった。言いたくないのならそれでいいけど、もうリュウゴには近づかないでよね。これ以上近づいたら、もっと痛い目に遭うからね」

 言葉の綾だけど脅してやった。

 その後私は腹立たしく踵を返す。

 どうせ嫌いな人だ。

 私には関係ない。

 その私の立腹した態度を見て焦ったのか、愛美里はとうとう口を開いた。

「高宮さん、私何も知らない。もう近づかないわ。彼にもあなたにも……だから……」

 だから何だと言うのだろう。

 あくまでも自分を守りたい保守的な態度。

 その後は言葉を濁すようにぶつぶつとしか聞こえなかった。

 私は振り返り、愛美里を睨んでやった。

 何が言いたいの。

 そんなこと私の知ったことじゃないわ。

 私の方こそあなたなんてどうでもいいのだから。

 それが効を奏したのか、益々怖がって愛美里の身が竦んでいた。

 あれだけ自信たっぷりにしていた女王様だったのに、私の前ではその面影がない。

 自業自得。

 そんな言葉が頭によぎった。

 これで愛美里も懲りてリュウゴに近づこうとしないだろう。

 やっと痛い目を知ったのだ。

 誰がなんと言おうと、リュウゴはやっぱり私のもの。

 だけどまだ高校生でいることがもどかしい。

 私は精一杯背伸びして大人びようとする。

 なんて健気なんだろう。

 そんな風に思う自分がおかしくてくすっと笑ってしまった。