「どうしたの?」

 ドアの前で突っ立っている私にリュウゴが声をかけてきた。

「もしかして全てが夢なんじゃないかなと思うと、このドアを開けるのが怖くて」

「じゃあ、一緒に確かめようか。これが夢だったら、外はどんな現実が待っているんだろうね」

 面白半分、他人事のようにリュウゴが軽々と言った後、ドアに手をかけて押した。

 私はごくりと思わず息を飲み込んだ。

 明け放たれたドアの向こう。

 太陽の光がまぶしく私に降りかかる。

 一瞬辺りが白くなり、私は咄嗟に目を瞑ってしまった。

「ほら何も心配ないよ」

 リュウゴが優しく私の腕を取って引っ張った。

 ゆっくりと目を開けると、駅前のざわついた喧騒が視界に飛び込む。

 道路を走っていくたくさんの車。

 電車も通っている。

 ごちゃごちゃとした看板があちこちにある雑居ビルがひしめき合っている中を、忙しく行き交う人々。

 それはいつも見ている光景だった。

「夢じゃなかった」

 思わず呟くと、リュウゴは「ほらね」と笑いながら言った。

 私はこの世界でリュウゴに本当に助けられたんだ。

 これが現実の出来事に感謝する。

 私はまだリュウゴと離れたくなかった。

 少しモジモジしていると、リュウゴはそれを察してくれた。

「うちに来る?」

「えっ?」

 ちょっとドキッとする。

「家には人がいるから、大丈夫だよ。よかったら家族を紹介するし。僕も家族に麻弥ちゃんを会わせたいな」

 リュウゴの家族。

 どんな人たちなのだろう。

 もしかしたら将来私の家族になる人なのかもしれない。

 私は喜んでその誘いを受け入れた。