好きなだけ楽しんでいいわよ。
 入り口に足を踏み入れながらエイミーがそう言う。なにをどう楽しむのか、すぐには分からなかった。
 エイミーは私は向こうだからと、右側の奥へと向かって行く。後で合流しましょうね。中に入れば一緒だから。背中越しにそんな言葉聞こえた。
 僕たちは訳が分かっていないにも関わらず、取り敢えずはエイミーとは反対側の、左側の奥へと向かった。なんだか暗い空間ではあったけれど平坦な道で、あっという間に明るい光が見えてきた。外から見た建物の外観と、中に広がる空間の大きさが矛盾していることは無視することに決めている。この世界では、そういった常識は通じないと既に学んでいた。
 辿り着いた先が脱衣所だとは思いもしなかった。いつそこにやって来たのかは知らないけれど、つい先程来たばかりっていう先客が二人いて、着ていた服を脱ぎ、棚から取り出した水着のような身体にぴったりサイズのズボンとシャツを身につけていた。
 僕たちも取り敢えずそれを真似して服を脱いだ。そして目の前の棚を開けてみる。そこにはなにも入っていなかった。仕方がなく脱いだ服を入れて、棚を閉じた。
 先客の二人は、その格好で更に奥にある別の空間へと繋がっている入り口向かって行った。僕たちもその後を追おうとしたら、その二人がゲラゲラ笑い出す。
 おいおい! その格好で行くのか? 流石にそれはないよ! なんて腹を抱えてその場に膝をつき、床をバンバン叩いた。
 ここは銭湯だろ? 裸でもいいじゃんか! 雄太が勝手な想像を元に口にした言葉だったけれど、当然のように僕もそうだと思っていた。
 ここが銭湯? まぁ、似たようなものだけど、裸じゃちょっとなぁ? 服をしたっまた棚があるだろ? もう一度開けてみな。それに着替えてからこっちに来るんだな。まぁ、とても楽しいから期待することだよ。
 二人は立ち上がり、お互いの顔を見合わせながら時折僕たちに視線を向けてそんな会話をしながらその入り口を超えて行った。
 僕たちは自分たちがそれぞれ閉まった棚を開けてみた。するとそこには先客の二人が着ていたのと同じデザインのズボンとシャツが置いてあった。手にしてよく見ると、デザインは同じでも、サイズが人によって違うことが分かる。その色もまた、違っていた。
 先客の二人は、明らかに僕たちより背が高く、身体つきも大きかった。自然に会話が出来ていたけれど、きっとエイミーとも違う国の出身なんだと思われる。
 先客の二人のシャツとズボンは黒を基調としていた。模様のような箇所がいくつかあり、そこの色が違っていた。一人は濃い灰色で、一人は薄い茶色だった。
 僕たちのは三つともがネイビー基調だった。サイズはどれも似ていたけれど、ほんの少し大きさが違う。三人それぞれにピッタリ合うようになっているようだった。色の違いは、僕がエンジで、雄太と昭夫はほんの少しの色味が違う薄い黄色だった。
 シャツとズボンを身に纏った僕たちは、ようやく入り口に入ることが出来た。