「手伝ってくれるのくれないの?」
森戸は京香を見下ろして威圧する。まったく生意気な。
五つ年下の美青年。
性格はビミョーだけど、目の保養にはなりそうだ。
京香はガレットを丁寧に切り、口に運び、味わう。
目先を変えればなにかが見つかるかもしれない。
「いいわよ、手伝ってあげる。そのかわり毎日ガレット食べさせて」
「いいですよ」
「交渉成立ね」
「お客さん、名前は?」
「京香。伊藤京香」
「ふうん。意外とフツー?」
「あのね」
「イトーさん、明日ここに9時で。待ってます」
「はあい」
真面目に返事するのも癪で、京香はわざとだるそうに声を出した。
明日か。いい響きだ。
そう思いながら。
(おわり)