私は受話器を置くと、急いで病院に駆けつけた。

『良人は、あなたの婚約者よ。』

それを聞いた時、私の中で何かが飛び散り、何かが固まった。

タクシーに乗っている間、“やっぱり”と言う気持ちと、“そんなの嘘”と言う思いが、交差する。

病院に着いて、お母さんに言われた病室を探すと、私はある事に気づいた。

その病室は、私が入院していた病室と、同じフロアにあったのだ。

一番奥の病室。

なぜ今の今まで、気づかなかったんだろう。

エレベーターの向こう側だったと言うのが、理由の一つだったとしても、退院する前なら、その向こうに行けたかもしれないのに。


自分を責めながら、ドアをノックして病室に入ると、その異様な雰囲気に、飲み込まれそうになった。

「珠姫さん!」

私を見つけてくれたお母さんは、涙がらに私を迎い入れてくれた。