「全部、処分した。」

「えっ……」

「過去の写真なんて、いらないよ。見たら、珠姫が苦しむだけだからね。」

いつも、優しく見守ってくれていた賢人が、そこにはいなかった。

「なんで?」

だから余計に、私は悲しかった。

「私が苦しむからって……なんで、楽しかった時の写真まで、捨ててしまうの?」


私の為に、会社を休んで。

私の為に、遅くまで世話をして。

私の為に、ここで暮らして。

賢人のその優しさが、今は辛い。


「……風呂入ってくる。」

「賢人!」

私が手を伸ばすと、それを払い除けられた。

「放っておいてくれる?」

背中越しに見た、賢人の寂しそうな顔。


初めてだった。

いつもは、私の方が寂しそうで、悲しそうだから。


『寂しくないよ。僕がいるから。』

穏やかに微笑んでくれる彼に、なぜ私は同じ言葉を、返してあげられなかったんだろう。