「難しい事、考えないでさ。」

「……うん。」

何か重要な事を思い出しても、何かが違うような気がしてならない。

その度に、賢人に“大丈夫だよ”と、慰められる。

それの繰り返し。


「あっ!」

「なに?」

「そう言えば……」

私は、温泉に行った時に撮った、写真がある事を思い出した。

「待って。もしかしたら、写真が……」

立ち上がって、棚の引き出しを開けた。

「あれ?」

確か、写真はここに入れておいたはずなのに。

「ない。」

他の引き出しも見てみた。

「ここにも、ない。」

隣の引き出しも、そのまた隣の引き出しも、開けてみたけれど、写真は入っていなかった。

「どうして、ないんだろう。賢人、知らない?」

振り返った私の目に、飛び込んできた賢人は、物々しくて、まるで別人のようだった。