「ねえねえ、前も誕生日プレゼントに、時計をあげた事があったよね。ほら、ペアの。」

「えっ?」

驚く賢人に、胸がズキッと痛んだ。

「……覚えてないの?」

「あっ、いや……そうだったね。そうだそうだ。今、思い出した。」

あんなに嬉しがっていた腕時計を外して、賢人はまた箱の中に、それを戻した。

「そう言えば、賢人、あの時計してなかったよね。」

「うん。使ってるうちに止まっちゃって。」

「確か……自動巻きじゃなかったっけ?」

「あっ、そうなんだ。」


そうなんだって……

使っている時に、時々巻かれる音がするから、知ってるはずなんだけどな。

私は不思議に思いながら、賢人を見つめた。


「何だよ。」

「別に?」

私は大きな口で、ハンバーグを食べた。

「自分だって、その時計してないじゃん。」