賢人が一口ビールを飲んだ時を見計らって、私は隣の椅子に隠して置いたプレゼントを、勢いよく取り出した。

「その代わり、これをあげる。」

「何、それ。」

急に元気になった賢人は、それを受けとると、前後左右を見渡した。

「誕生日プレゼント。」

「マジで?嬉しい。」

包装を破って、中の箱を開けた賢人は、おもちゃを手に取った子供のように、目を輝かせていた。

「これ、高かったんじゃない?」

「ううん。実はそうでもないの。」

賢人は箱からそれを取り出すと、嬉しそうに腕にして見せた。

「ちょうど欲しかったんだ。腕時計。」


あの後、時計を欲しがっていた、賢人の顔がまた浮かんできて。

他のお店で、腕時計を買った。

その時も、しばらく悩んだけれど、やっぱり時計にしてよかった。